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ニュースな話 松沢良治

嘉之助蒸溜所がクラフト・ジャパニーズウイスキーを日本から世界へブランドメッセージを発信 2030 年に現在の5倍以上の販売規模拡大へ

2024年05月10日(金)
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背景にクラフト・ジャパニーズウイスキーの台頭

 2010年代に、ウイスキーの国際的な品評会でジャパニーズウイスキーが好成績を収めるようになり、その繊細でバランスの良い味わいが世界的に認められ、徐々に日本のウイスキーの輸出は増加している。

 輸出はコロナ禍を経てさらに伸び、2020年には清酒を追い抜きウイスキーが輸出額のトップに躍り出ている。その中でも小規模な蒸留所で造られるクラフト・ジャパニーズウイスキーが世界からも注目。希少性が高く、日本の酒造技術に裏打ちされた各蒸留所がこだわり抜いたクラフト・ジャパニーズウイスキーは、世界の品評会でも度々高い評価を受けており、国内にクラフト・ジャパニーズウイスキーを造る蒸留所が増え続けているのがその背景にある。

 日本のウイスキーは製造開始から100年を超え、2023年3月時点で、ウイスキーの製造免許場は国内に180を超えているが、鹿児島県は全国の都道府県の中で 1 位のウイスキー製造免許場を持っている。さらに鹿児島県産のジャパニーズウイスキーは年々その勢いを増し、多数の国際的な賞を受賞している。
 
 「嘉之助(KANOSUKE)蒸溜所」は、1883年の創業から140年以上の焼酎造りの歴史を持つ老舗酒造会社「小正醸造株式会社」が母体の会社である。65年以上樽熟成焼酎で培ってきた樽貯蔵と熟成、ブレンドの経験と知識を生かし、「世界共通の蒸留酒“ウイスキー”に挑戦し、認められれば、自社のバックボーンである焼酎にも世界中から興味をもってもらえる」という発想があった。

 嘉之助蒸溜所は、2017年の始動から日本発のクラフト・ ジャパニーズウイスキーとして、「サンフランシスコ・ワールド・スピリッツ・コンペティション(SFWSC)2022」でダブルゴールドならびに「ベストオブクラス(最高賞)」を受賞するなど世界で注目を集めた実績がある。

 

「嘉之助蒸溜所」のグローバル展開

 2021年に嘉之助蒸溜所は飲料ブランドの構築および拡大を図る起業家を支援するアクセラレーターであるディスティル・ベンチャーズ社と提携。同社のプログラムを通じて英大手酒造企業ディアジオ社からの出資が行われ、国際的な販売網の拡充やマーケティングの強化、積極的な新製品の開発が可能となった。ディアジオ社が日本のウイスキーメーカーの株式を取得するのは初めてのことで、「ジョニーウォーカー」や「スミノフ」など、多くの卓越したブランドを保有するディアジオ社からの後押しを受け、嘉之助蒸溜所は国内外でブランド価値構築を目指している。

Diageoとのパートナーシップの橋渡しとなった、Distill Venturesの創業者であるフランク・ランペン氏は、「私がジャパニーズウイスキーのパートナーを探していた時に出会った嘉之助蒸溜所は、初めて訪れた時からファミリービジネスの伝統と、蒸留酒の専門技術の高さで、際立っていました。3基の異なるポットスチル、鹿児島の気候に適した多様な樽の原酒をもち、本当に質の高いウイスキーを生産していて、最初に嘉之助を試飲した時はまだとても若かったのですが、ポテンシャルを感じました。もちろん、蒸留所の環境にも魅了されました。丸2年が経ち、今ようやくシングルモルト嘉之助や日置ポットスチル、嘉之助ダブル・ディスティラリーと3種のコアレンジ商品を発売できるようになった嘉之助チームをとても誇りに思っています」と語っている。

 パートナーとして、嘉之助蒸溜所と伴走しながら、次世代のジャパニーズウイスキーのリーダーになることを目標に、グローバル市場への展開を目指している。

 

今後の販売戦略について

 嘉之助蒸溜所は、今後日本発、世界ブランドへの成長を目指しており、市場はグローバルを意識している。その中でも、選択・集中し下記の5つに定めている。

 まず第1は、ホーム市場である日本で確固としたポジションを築くこと、そして第2は、海外市場で最重要な米国市場への展開。特にNY州とカリフォルニア州に注力。第3は、ウイスキー発祥の地でもある欧州。特にUKとフランス、ドイツの大都市に注力する。そして第4は、アジア各国。具体的には、中国/香港と台湾、シンガポールが対象。そして別途、免税市場を重要マーケットと考えている。2030年には現在の5倍以上の規模になることを目標としている。

 

嘉之助の今後の3つのチャレンジ

① 世界に愛されるブランド「KANOSUKE」の創造
鹿児島の土地で培ってきた歴史や風土、伝承技術を生かし、新しく柔軟な発想を持ち、愛される高品質なジャパニーズウイスキーブランド、 KANOSUKEを作り続ける。具体的には、今回の3商品をコアレンジとし、限定商品などを引き続き織り交ぜていく。また、嘉之助蒸溜所見学の際のホスピタリティやビジターセンターの充実化、蒸溜祭をはじめとしたファンイベントの開催などを定期的に実施していきたい。

② 「KANOSUKE」ブランド体験の充実化
蒸溜所限定ボトルやグッズの新規開発、使用済みの樽材の再利用など、蒸溜所来場者に喜んでもらえる環境を整えていく。見学ツアーは、貯蔵庫や日置蒸溜蔵まで案内するプレミアムツアー、ブレンダー指名のガイドツアーやサンセットウイスキーツアーなど、こだわりのあるツアーを通し、ブランド体験の充実を図る。昨年度実施した「蒸溜祭前夜祭」の定番化や、定期的なBBQイベントなどを取り入れて提供していく。

③ 鹿児島・日置の地域活性化と地域貢献
地域を活かし、地域に愛され、地域になくてはならない存在に。具体的には、現在日置市から廃校となった日吉小学校を譲り受け、体育館を貯蔵庫として活用し、校舎を地域のコミ ュニティスペースとして貸し出している。グラウンドもある為、このスペースを活用し、ウイスキースクールやキャンプなど、色々なアイデアを実現できるよう取り組んでいる。また蒸留所の目の前に広がる吹上浜は、日本一のアカウミガメの産卵地として知られているが、行政とタッグを組んで、保護活動へのサポートや、環境に配慮した生産活動を含めたSDGs活動にも取り組んでいきたい。


嘉之助蒸溜所
https://kanosuke.com/

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