リゾート再生の起爆剤を模索
初めに赤倉観光ホテルをどうして取得されようと思われたのかについて教えてください。
石井 赤倉観光ホテルを知ったのは、当時の総支配人と私の共通の友人からの紹介でした。赤倉観光ホテルは、日本のリゾートホテル黎明期に誕生し、皇室もご利用された由緒あるホテルと聞いて現地を訪れてみたのです。すると建物は老朽化、陳腐化しており、第一印象は決してよいものではありませんでした。しかし、グリーンシーズンにぜひ、来てほしいとのことで数カ月後に再度見学に行ったとき、ホテルはまったくの別の表情をみせてくれました。ホテルからの景色や周辺環境を見た瞬間、赤倉観光ホテルのポテンシャルの高さを感じ取って「ここならいける」と直感したのです。それが 2004年のことでした。
その後、取得に至ったわけですね。取得後の運営についてもお聞かせください。
石井 まず、ホテルの価値向上を目指してハードとソフトの改革に着手しました。ハードでは屋根をはじめとする建物の修繕に加え、赤倉の強みである雄大な自然を余すところなく楽しめるよう、本館の窓を可能な限り大きくするなど大規模なリノベーションを実行しました。これによって館内の雰囲気が一変し、お客さまの反応が変わり、従業員たちが自信を持つようになるという好循環が始まったのです。
また、ソフト面では、従業員の意識改革を求めました。私が取得する以前は親会社のホテルチェーンから送客されていたため、営業マインドが希薄でしたので。チェーンから脱退後は、自ら顧客を獲得するという決意がスタッフにも伝わり、成果も徐々に出始めました。しかし、こうした変化に手応えを感じつつもまだまだ納得できる業績ではなく、次の一手を模索し始めました。
その一案として温泉を掘削して日帰り温浴施設をつくるというアイデアも浮上しましたが、ホテルスタッフたちから赤倉観光リゾート&スパの中枢はなんと言ってもホテルだ。このホテルをブラッシュアップすることが重要だという意見が出てきたのです。私はこの熱意にかけてみようと思い、新たな顧客層獲得を目指して新館の建設を決断しました。その目玉企画がスパの導入でした。