店舗内観。一歩店内に入ると、まるで中国にいるかのような錯覚を覚える空間となっており、在邦の中国人コミュニティはもちろんのこと、中国料理や文化の好きな日本人のお客さまからも喜ばれている
上野に新しいタイプの“ガチ中華”が誕生した!ラム串焼きをメインとした「羊炭長(ヤンタンツァン)」だ。
同店は中国の延辺朝鮮族自治州出身の金澤企画国際㈱社長・金澤永浩氏によりプロデュースされた、故郷の味をフィーチャーした同社初のオリジナル業態だ。メインの羊に牛、豚、鶏といった肉串に加え、中国東北地方のひとびとの郷土食である蚕串などもオンメニューされており、中国ではいまや全土で店舗を見つけることができる人気の肉串料理を食べることができる。これら肉串は各テーブルに設置された専門の自動回転串焼き機に乗せて炭火で焼いて食べるのだが、ひとたび串を機械に設置すれば自動で回転し、全体を万遍なく焼いてくれる。焼きあがった串を遠火で保温しながら置いておけるスペースもあり、料理が冷めるのを気にすることなく会食を楽しめる点も嬉しい。同店で使われている羊肉は本誌既報の「味坊集団」から仕入れているといい、その点からもどれだけ“ガチな”中国の串焼きを味わえるかが伝わるだろう。
ちなみに同店は中国人デザイナーにより空間デザインが施されており、店に入った瞬間に中国に旅行に来ているかのような気持ちになる。どのくらい非日常感があるかといえば、筆者のみならず同店を訪れた複数のひとびとが皆同様の感想を述べるくらいに、“THE・中国感”に浸れる感じだ。さらに、要所要所にエンターテインメント性が盛り込まれている。業態として同店を参考にする場合はかなりニッチな参考店になるかもしれないが、レストランにおけるエンターテインメント性という意味では、金澤氏が取り入れた要素に触れることは店舗にその要素を取り入れようとしているすべての事業者にとって視察推奨店だといえる。
近年、上野・御徒町エリアにはさまざまな中国“地方”料理の店ができており、いずれも人気店となっている。要因として、エリア的に在邦の中国人コミュニティが定着している点もあるが、それ以上に日本人が本格的な、日本人の舌に媚びていない中華料理を欲している傾向があるといっていいだろう。既にいくつかのエリアにおいては “ガチ中華”は定番となっているが、地方においてはまだまだ商機のある市場でもある。
ぜひ「羊炭長」のエスプリに触れ、新たな魅力創生に活かしてもらいたいと思う次第だ。
羊炭長(ヤンタンツァン)
URL:https://njf-group.co.jp/works-kpiinc
担当:毛利愼 ✉mohri@ohtapub.co.jp