24 時間以内のレスポンス
毎朝、デスクのパソコンを開けるとそこには、時差のある国のゲストからのメールが届いている。当ホテルの規模でも、一日に20 通から40 通のメールが送られてくる。プライベートで友人から届くメールに返事を返すだけでも、この数になると時間が相当かかる。それがまだ見ぬゲストからのメールとなるとなおさら、正確かつ丁寧に返信をしていくことは容易ではない。ときとして、その返事が確認書や契約書、支払い証明書にもなることもあり、慎重に対応する。メール上でのビジネスマナーは、24 時間以内のレスポンスが基本だ。
増加するインターネット経由のコミュニケーション全般の対応を検討し、メールの窓口も独自のアドレスを設置。予約課や営業部、また専門部署を創設し、交通整理、コントロールをしているホテルが増えた。
昼夜を問わず、予約が入った時点から始まるやり取りの増加に、従来の業務、人員配置、勤務時間の変化を求められている。滞在スケジュールを作ってほしいという要望や、なんと、飛行機上から、数時間後に到着する空港迎えの車の依頼の緊急メールも入る(羽田空港の深夜早朝発着の飛行機乗り入れが始まって以来、深夜業務も増えている)。ミシュランのレストラン予約などは、自ら数店の店名を候補に挙げ、滞在中のすべての昼・夕食時間を埋めてほしいという依頼も多い。
何をホテルの売り上げにならないことを行なっているのかと批判的な方もまだ多い。しかし、ホテルがただの宿泊先という考えから、ホテルを起点に知らない土地と時間を“楽しもう”という「消費者心理の変化」がその背景にある。旅先の“頼れる”コンシェルジュを求め、これが外国人観光客の増加とともに、ホテルの力が試され、客室料金を含めたホテル間の差別化のポイントにもなっていることはまちがいない。
第9回
Golden Keys 黄金の鍵 ~ Hospitality の世界から~
第9回 24時間以内のレスポンス
【月刊HOTERES 2015年11月号】
2015年11月27日(金)