「世界倉庫」外観。地球がデザインされた暖簾のむこうに、ネオとニュー、もっとも“インな京都”が待っている
観光地としての京都は魅惑的でありながら、難しい場所だ。
同地は多くの日本人にとって歴史的・文化的に最もメジャーな観光地であり、インバウンドにとっては “日本美、日本文化”を象徴する神秘的且つ、全方位的にファンタスティックな場所だ。文化財保護や景観に関する取り組みも行政指導の域にとどまらず、“その思い”を幼少時から誇りと共に身につけ成長するひとびとに民間レベルでも守られている。観光地が自らの存在価値を守り、高める上でロールモデルとすべき地といっていいだろう。
一方で、よくもわるくも“ステレオタイプな京都力”が大きすぎるがゆえに、若い世代やリピーターに対する新たな観光魅力の創出が難しい面もある。現在既にコロナ前のオーバーツーリズムに戻りつつあり、職住近接な中で暮らすひとびとの中には新たな魅力登場に積極的ではない趣もなくはないが、“コト消費、トキ消費”を京都で経験することは、幾度となくこの地を訪れた経験がある場合にもキラキラとした興奮を伴う人が多く、新たな魅力を求めるリピーターも多い。そんな中、地域経済との融合を伴った文化発信、国際交流、アート・カフェ領域における観光地としての価値創生、そして日常のワンシーンを過ごせる場の提供と、さまざまなシチュエーションのもとに京都に集うひとびとが一同に会せる“場”を提供しているのが「世界倉庫」だ。
このようなミックスカルチャーが、おのおのの自由と存在感を守られた中で共存し得る場を作れるというのは簡単なことではない。お客さまと店舗、お客さま同士、異なる目的、異なるカルチャーのバランスがほどよい距離感をもって取れなければ、そこは不協和音の温床となってしまうからだ。当然そうなれば居心地も悪く、滞在価値も下がる。実際、さまざまな事業者がこのような場を京都のみならず、東京や他の地域でも展開しているが、“バランスのアンバランスさ”が場の価値を活かせていない店舗も多い。
それではなぜ? 「世界倉庫」がそういった場の提供をなしうるのか?
そこには22年に渡り、京都、そして関西のナイトエンターテインメントをトップリーダーとして牽引し、大型イベントのオーガナイズでも定評のある「WORLD KYOTO」のオーナーでありプロデューサーの中本幸一氏、そして彼が率いるチームの存在があるからだ。そんな彼らがデイタイム業態として、京都と世界を“カルチャーでつなぐ”場として開発したのが「世界倉庫」だ。
2階のフリースペース。時にギャラリー、時にイベントスペースとして活用され、通常はカフェタイム用やワーキングスペースとして利用できるように開放されている。阪急線京都河原町、地下鉄烏丸線四条の駅からほど近いことから、ワーケーションや出張の際に利用するにも便利なロケーションだ
筆者が思うに、コンテンツ力は言わずもがな、「世界倉庫」の勝因は場の空気感やお客さまとスタッフとの間に自然とできる“いい具合な距離感”にあると推察している。“百聞は一見にしかず”、京都を訪れる際は「世界倉庫」を訪ねてもらいたい。そして、このような場を生み出す彼らのセンスと世界観に触れてみてもらいたいのだ。同店は平日はカフェとして営業しており、コワーキングスペースとして利用することも可能だ。一転、週末にはマルシェや食イベント、アートイベントに交流会と、バラエティ豊かなイベントが開催されている。いずれの「世界倉庫」訪問でも、 “場づくり”には彼らのマインドがしっかりと反映されており、筆者のいわんとする空気感は感じてもらえると考える。コミュニティ作り、文化発信ステーションを創生したいと考える事業者はぜひとも、ビジネスアイとお客さまとしての視点、その両面から「世界倉庫」の魅力を感じてもらいたいと思う次第だ。
「世界倉庫」
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担当:毛利愼 mohri@ohtapub.co.jp