パンデミックの厳しい環境下にあっても長期的にはホテル業界の発展を信じている
----日本で達成したいミッションについて、どのように考えていますか。
一つめに取り組むべきミッションは「規模の拡大」です。私たちはこれまでの2年間で客室数を 35%成長させることができました。そして今後も、規模の拡大に向けた活動を継続していく必要があります。
二つめのミッションである「人材の開発」は、最重要課題の一つだと考えています。パンデミックの影響で、ホテル業界全体で 30%の人材が他業界に流出してしまったと聞いています。人材を再び確保するためには、ホテル業界を含むツーリズム産業がキャリアアップの面でとても魅力的であることを、次世代の方々に向けて訴求していく必要があります。
そして次世代がキャリアアップしていくことができる道筋を、これまで以上に強化していかなければなりません。
私はDE&I(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン:多様性、公平性、包摂性を高めるための対策)を重視していますが、その意味でも人材開発は非常に大切な要素だと思っています。IHGは「Journey to Tomorrow」という考え方に基づいて、人材開発についても進めていこうとしています。その取り組みは既に進捗していて、日本の IHGにおけるリーダーシップを持つメンバーの44%、総支配人の 25%が女性というように、多様性について確立できつつあると感じています。
もちろんまだやらなければならない取り組みはたくさんありますので、リーダー同士が協力しながら旧来の考え方を変えていかなければならないと思っています。多様性に関しては性別だけでなく、年齢の面でも追求していく必要があります。経験が長ければそれだけ知識が豊富であるというメリットはもちろんありますが、それでも年齢を重ねなければ GMにはなれないという既成概念は打ち破るべきだと私は考えています。40歳以下の若い世代のメンバーであっても、能力があれば GMのポジションをねらえるという体制を築いていきたいのです。多様性を広げることで、より多くの世代の人々を惹き付けることができるホテルになっていきたいと思います。
三つめのミッションは「オーナー様とのパートナーシップ」です。パンデミックの中、この数年間はホテルオーナー様にとって厳しい時代であったかと思います。そのような環境下であっても、私たちはパートナーとして常にオーナー視点を共有しながら、ホテルの運営にあたっていく必要があります。
長期的にはホテル業界は発展していくはずだと、私は楽観的な見方をしています。明るい未来に向けて、ブランド、人材、オーナー様との関係性のバランスを正しく取りながら、ホテルのビジネスを立て直していきたいと思っています。