クラウド経営、ニュー・ノーマルが追い風に
■御社はJR 東日本グループとも協業し「ホテル運営のデジタル・トランスフォーメーション(DX)」の領域で実証事業を推進するなど、スマートホテルオペレーションに取り組まれています。しかしながら、ホテル業界においてはSQUEEZE の存在をご存じない方もいらっしゃいますので、御社の取組みの特長をお聞かせください。
SQUEEZE は「ホテルテックカンパニー」として、自社でのホテル運営(スマートホテル事業)と、宿泊運営システムの提供やコンサルティング(ソリューション事業)を行なっています。これまでのホテル経営では、支配人やスタッフの多くがホテルの現場内で施設を運営管理していましたが、当社では『クラウド型ホテル経営』を推進し、IT 活用とクラウドスタッフ(オンライン上のスタッフチーム)を組み合わせることで、省人化や無人オペレーションを実現している会社です。
ホテル運営事業では、アパートメントホテルの「Minn(ミン)」、エンタメ型の「Theatel ( シアテル)」の2つの直営ブランドを軸に、大手企業からの運営受託も含め20 棟以上のクラウド型ホテルを運営してきました。コロナ禍においても昨年3棟を開業し、効率的な運営のおかげで満室や黒字化となる施設もありました。また、クラウド型ホテル経営システム「suitebook」や非接触型モバイルチェックイン機能を自社で開発し、運営施設内でPDCA を繰り返し、業務効率・生産性を追求してまいりました。自社製品を率先垂範することで機能開発の学習力を高め、現在はソリューション事業としてシステムやノウハウの外販も積極的に行なっております。近年は大手ホテルチェーン様ともDX 推進の領域で協業するケースが増え、昨年末にはJR 東日本グループ様とも協業し、共に伴走する形(PoC:実証実験モデル)でホテル運営のクラウド化、DX 推進に取り組んでおります。
■「クラウド型ホテル経営」に馴染みのない方も多いと思いますが、どのような仕組みでしょうか。
当社の運営施設では、受付、電話対応、価格調整、チェックイン・アウトなどの業務は海外にいる「クラウドスタッフ」がオンライン上で対応しており、多くの施設がフロントに常時人をおいていません(無人または日中のみ1-2名体制など)。複数のホテルを遠隔地からクラウド上で運営管理できる仕組みを構築しており、これを『クラウド型ホテル経営』と呼んでおります。ホテルの運営機能を分解して再定義することで、オンラインでできることをアウトソースし、自社で人員の多くを抱えることなく、損益分岐点(≒固定費)を下げ、身軽な経営体制を可能とする仕組みです。さらに、ホテル業としての本質的な「コア業務」と煩雑作業の「ノンコア業務」を明確に分け、ノンコア業務を徹底的にシステムで自動化・効率化を行なった結果、少人数の現場スタッフでもよりクリエイティブで介在価値が高い業務に時間とリソースを割くことができるようになりました。
クラウド経営化させることで、よりオペレーションを分析したり精緻化するインセンティブも働き、データを活用した定量的な改善、提案も生まれます。例えば、当社の場合、宿泊者との電話やチケット(1 返信単位で)も原価計算しています。
■コロナによる影響はいかがでしたか。
コロナにより生まれたニューノーマルでは、非接触・非対面も重要視されますが、当社のホテル運営では、数年前からこれらのオペレーションを実施していました。宿泊者はすべてスマートフォン1つで予約からチェックイン、支払いをすることが可能です。昨年事前チェックイン機能を搭載し、宿泊者の現地でのチェックインは1 分以内と大幅な時間短縮にも成功しました。当社が運営する客室には一切固定電話やPBX 等は設置せず、宿泊者は自身のモバイルからオンライン通話やLINE 等のチャットアプリを通じて、24 時間・多言語で対応ができるオンラインコンシェルジュにアクセスすることができるようにしています。困りごとがあっても電話一本やチャットで迅速に解決することが可能です。