職人の腕次第で変わるメニューこそ最善
中国地方にある地域一番店のベーカリーが、社員と会社の、よりよい関係を目指して、独自の契約関係を目指して、取り組みを開始した。ベーカーの自立した連合体をイメージし、店と個人の関係を、上下ではなく、左右の関係を目指しての第一歩を踏み出した。一般的には、長年勤め上げていくか、独立するのかの2 本の選択肢が、業界の常識とされている。
将来は、自分の店を持つ。夢に向かって、20 代、30 代の職人さんが頑張っている。しかし、製造技術が熟した段階で、離職してしまうのは、お店にとっても痛手だ。それに、独立にはお金もかかるし、家族の理解がなければ進めにくい。勤めてやっていくにせよ、会社のレシピ通りではつまらない。自分の技能をフルに試しにくい環境で続けていくのは窮屈だ。
通常、品ぞろえは会社が決める。決められたレシピに基づいて、腕を振るっていくのがベーカーの役割である。毎日同じ品ぞろえで、お客さまを迎えるため、会社としての品質を維持していくため、理由はいろいろある。だが、職人さんの本領を発揮する機会や、作り手が市場を見て、お客さまの反応を見て、その都度、商品でチャレンジしていく機会は相対的に減っていってしまう。
Profile
岡村衡一郎
(おかむら・こういちろう)
1971 年生まれ。亜細亜大学卒。(株)船井総合研究所を経て、2004 年(株)スコラ・コンサルト入社。120 社を超える企業変革を支える。「会社が変わるとは何か」、「人がイキイキ働くには何が必要なのか」を考え続け、「一品」という変革コンセプトを発見、体系化する。支援先の起源や今あるリソースを足場に、「あるもの」から「ないもの」を生み出す一品イノベーションに多くの経営者ファンを持つ。変わるためのテコをあぶりだす「経営者オフサイト」、「『一品』で会社が変わるワークショップ」を主催。著書に『一品で会社を変える』(東洋経済新報社)、『30 代でチームのリーダーになったら最初に読む本』(同社)など
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