10 年以上熟成された古酒を集めることで、酒蔵支援につながる新マーケットを創造
島田 まだ認知度が低い古酒の魅力を、どのように人々に伝えていきますか。
安村 最初に私たちがアピールしたいのは、「古酒には実に多様なタイプがある」ということです。古酒の飲み比べをした経験を持つ人は世の中にほとんどいませんし、あるときたまたま1種類だけ飲んだことがある人が少しだけいるというのが古酒マーケットの現状だと思います。飲んだことのある人のイメージは、「これが古酒だ」と凝り固まってしまっているのです。
私たちが集めた33 蔵の古酒はものすごく幅の広い世界を生み出していて、その中から好きなものを選ぶ楽しみもあります。和食に合う淡熟系、ナッツ、チーズ、ドライフルーツに合う中熟系、バニラアイスクリームにかけてもよし、フォアグラなどに合う濃熟系とさまざまな飲み方を楽しんでいただけます。
この形で古酒の営業ができるのは匠創生だけだと自負しています。「古酒のプラットフォーム」としてブランドを立ち上げた私たちは、異なる酒蔵の古酒を組み合わせることで、新しい古酒の魅力の発見につなげていきたいと考えています。
島田 商品開発にあたって、蔵元に味のリクエストもしましたか。
安村 味についての希望をまったく言わないわけではないのですが、それよりも重要視しているのは「基本的に10年以上の古酒」という条件です。角打ちで1杯1500 円から2000 円で提供される10 年以上熟成された古酒をそろえていきたいのです。蔵元にアポイントを取る際は、「10 年以上の古酒はありますか」と尋ねるようにしています。
また、匠創生ではあくまでも「酒蔵支援」というくくりで事業を進めていますので、無理強いすることなく、お持ちの古酒の中で出せるものを出してくださいという姿勢で取り組んでいます。
島田 事業の継続性を考えると、古酒の供給量の問題がいずれ出てきませんか。
安村 古酒マーケットを創る上で、私たちはボランティアではなくあくまでもビジネスとして展開していく必要があるので、基本的には1000リットル以上の貯蔵量がある古酒を探しています。条件の合う古酒が見つかったらタンクごと契約させていただき、「今回は何百リットル詰めてください」とお願いをして瓶詰めしていただく形を採っています。
事業の継続のためには、蔵元と銘柄を常に増やしていく必要があります。稼働している約1000 の日本酒の酒蔵の中で、10 年以上の古酒を1000?以上持っているのは10%程度だと私は見ています。いずれ古酒が売れるようになれば出荷制限のケースも出てくると思いますので、古酒の調達についてはもっと進めていく必要があります。私たちは古酒のパイオニアになるためにしっかりと押さえにいきます。
地方創生の一環として、とにかく古酒に火を点けなければなりません。蔵元には「私たちが絶対に火を点けてみせますので、将来の古酒マーケットの活性化のために今から酒を残しておいてください」とお願いしています。10 年後には価値の高い商品として必ず売れるようにします。