「レストランサービス技能検定」を実施 合格者はサービスを指導する立場で活躍
---日本ホテル・レストランサービス技能協会(HRS)の活動内容を教えてください。
HRS は個人会員約1300 名、賛助会員を含む法人会員約300 社からなる組織です。会員によって成り立っている協会ですから、常に会員数増につながる活動を続けています。
HRS の主な事業の一つに、厚生労働省の指定試験機関として「レストランサービス技能検定」を実施する役割があります。2020 年も4 月に公示して、8 月に学科試験、10 月以降に約1 カ月かけて実技試験を行なうスケジュールで準備を進めています。例年4000 人超の方々が受験していますが、2020 年については新型コロナウイルスの影響がどのような形で出てくるのか予測できない面もあります。
東京オリンピック・パラリンピックが1 年程度延期となったことで、ホテルで働く方々はこの時間をどのように使っていくべきなのかを考える必要があろうかと思います。その中でHRSとしては、サービスの技能をさらに向上させる時間にしていく方向性を訴求したいと考えています。それによってレストランサービス技能検定の受験者数を例年並み、あるいは例年以上を目指していくつもりです。
---各級の資格者数や合格率について教えてください。
業界認定の形で始まったレストランサービス技能検定は2002 年から国家試験となり、1 級、2 級、3 級のトータルで4 万2000 人(4 月14 日時点)の方々が有資格者となっています。
1985 年にHRS がスタートした時点では、ホテル産業の社会的評価は決して高いものではありませんでした。レストランや宴会場で働く人たちのサービスの技能を向上させるために一つの基準を設け、技能や能力を国際水準に引き上げていくことを目標にスタートし、それを業界で認定するため検定を実施してきました。1 級の合格率は毎年40%程度とかなり難しく、2019 年の1 級合格者は78 名でした。
狭き門をくぐり抜けた合格者は指導的な立場でサービスの仕事ができる人として、社会的にも認められる存在で、企業でも評価し級に応じて処遇に反映されているところもあります。1 級の有資格者の中から検定委員も務めていただき、現在300 人超の方々が全国の検定会場で力を発揮してくださっています。
研修、コンペティションなどを通じて知識や技術の能力を体系立てて習得
---特に力を入れている取り組みはありますか。
国から指定されているレストランサービス技能検定の事業と同時に、HRS 独自の事業も私たちは行なっています。その一つが「研修」の事業です。内容は料飲サービスが中心で、一つはテーブルマナー講師認定事業、中国料理、日本料理とそのすべてを習得したマスターの講師を認定するための講座と試験を行なっています。こちらについても、資格を取得した方々が自分の職場や業界において指導者として活躍していただいています。このほか独自の研修、講座や試験とともにメールマガジン、会報誌などの広報活動などによって、HRS の会員とその職場で働く方々をつなぐネットワークを構築しています。
人材不足が深刻化する中、企業が従業員に研修や視察の機会を与えることが難しくなっています。そこでHRS がその機会を効率よく提供する仕組みを創りました。例えば会員の新しい店舗を視察しながら、その戦略について研修を行なうといった即実践につながるような研修のプログラムを用意しています。
また、普段気になってはいるものの、なかなか体系立てて学ぶことができないという悩みに答える研修もあります。例えばワインや日本酒あるいはハラルの知識を獲得したり、レストランの店舗マネージメントや人材育成の方法を習得するといった取り組みは、スタッフの年齢が上がってくるにつれて必要になってきます。HRS ではそのニーズに応えるマネジメント研修を他の協会とも連携しながら進めています。
---個々が成長する上で、有効的な手段はありますか。
個人の力を伸ばすために有効な手段の一つとして、「コンペティション」が挙げられます。人と人とが競争することで自分自身のレベルを知り、どのように上達していけばいいのかを考えることができます。HRS では「国際ホテル・レストラン・ショー」のイベントステージにおいて、「HRSサービスコンクール」を毎年開催しています。お客さまをどのように満足させることができるのかが評価のポイントとなるコンペティションを、私たちは重要視しています。