それとは別に、筆者は現在2021 年に開催される予定のある数千人規模の国際会議のサポートをしているのだが、主催者からの指摘で驚かされることがあった。それは、当然それくらいの規模となるとそれなりの数のハンディキャッパーたちも参加するわけだが、彼らからすると日本にはそうした需要に対応できる客室が少ないというのだ。
実際に都内のホテルを調べてみると、約800室あるホテルでユニバーサルルームが1 室といったこともあった。室数で多いホテルでは日本青年館ホテルが220 室に対して29 室、京王プラザホテルでも1435 室に対して13 室などはあるが、多くのホテルで少ないのが現状だ。東京五輪開催もあって国土交通省主導でハード面の規定や客室数の基準を示した「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律の一部を改正する法律(改正バリアフリー法)」が2018 年10 月に閣議決定され、昨年9 月1日に施行されたが、現状は前述の通り。アメリカなどは洲によってルールが異なるようだが3~10%、イギリスでも5%程度と日本よりもはるかに高い基準だ。
では、なぜそのような現状なのかといくつかの企業に聞くと、「売りにくい部屋だから」という声が多く聞かれた。そして、海外でも以前は同様の見解だったそうだ。ところが、それを「ユニバーサルルーム」ではなく、「マルチパーパスルーム」として、例えば体が大きいゲストが快適に過ごせる部屋であるなど、さまざまなゲストのニーズに応えられる部屋とし、イメージを変えることで売りやすくしたという事例もあるそうだ。 今後、より日本が国際市場に出ていく中でこうした需要が増える可能性は小さくない。そして、そうしたニーズに応える部屋を持つことが強みとなるかもしれない。また、ハード面だけでなく帝国ホテルやコンフォートホテルなどでは社員がサービス介助士の資格を取るなどしているそうだ。そうしたソフト面での強化も必要だろう。 国境を超えた市場の変化は時にわれわれに想像を超えるニーズを突きつける。そうした変化に柔軟に対応できるかどうか。これも今後、重要なテーマとなってくるだろう。