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2020年3月13日号 連載第2幕 グローバル SAKE マーケットの創造者たち 第5回

連載第2幕 グローバル SAKE マーケットの創造者たち 第5回

【月刊HOTERES 2020年03月号】
2020年03月11日(水)
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島田 特A地区の山田錦が、本格的な酒造りのスタートラインになったのですね。

本田 ロマネ・コンティというとても高級なワインがあります。それに比べて日本酒はどれだけ高くても1万円。私たちもロマネ・コンティのような日本酒を造りたいという思いが、特A地区の山田錦を使った背景にあります。そこで特A地区全体でアンケートさせていただき、「中でも誰が最も高い栽培技術を持っているのか」を質問しました。

その結果、秋津村の2人の農家の方々の名前が挙がり、低農薬、有機肥料、稲木掛けによる最も自然に近い形の山田錦を作ってほしいとお願いしました。それが「秋津」という大吟醸酒の開発につながっていったのです。すると他の村でも「うちでも稲木掛けで作れます」と言ってくださる農家の方が出てきました。それで実際に特A地区内3地区の農家で山田錦を作っていただいたところ、それぞれの米で造った酒の味が違っていることに気づいたのです。

この違いを今は「テロワール」と呼ぶようにしているのですが、米を栽培する土壌の特性によって出来上がる米の“ 答え” が違ってくることが秋津、上三草、吉川米田の3地区の純米大吟醸の製造(97年販売)により分かってきたのです。

田んぼの「土の中身」を20 年間研究。酒造りに使う米の特徴の根拠を示す

島田 それほど早い時期に日本酒のテロワールについて考え始めたのですか。

本田 酒の味の違いが出る理由として「川筋」「気候」「地中の温度」「表土」といろいろな仮説を立てたのですが、どれも有意性を示せませんでした。最終的に「土の中身」に着目して研究に入り、約20 年続けてきました。そして2019 年11 月、ようやく有意性のある土のデータを開示できました。特A地区のそれぞれの田んぼ、特A地区以外の田んぼを掘って、地中の断面を調べて土のマテリアルを比較しました。するとマグネシウムやカリウムといった肥料や水をため込む保肥力を持つ土壌を、特A地区の田んぼは持っていることが分かってきたのです。そのデータをまとめて発表しました。

「この地域のこの田んぼの下層土にはこういう特徴があるから、こういう米ができて、こういう酒造りができる」と、根拠のある話ができるようになったのです。

結果論から言えば、「土地の味」と「蔵が造りたい味」が合致した日本酒から有名になっていくのだと私は思っています。例えば「この下層土はきれいな酒を造るのに向いている」といった見極めが、これからの酒造りにおいて重要な位置を占めてくると考えているのです。

島田 これからそういう意識で日本酒を見てしまいそうです。

本田 どうして龍力がこうした活動をしなければならないのか。それは「日本酒のロマネ・コンティを造りたい」というテーマの中で、私たちは「いい酒」ではなく「偉大な酒」を造りたいと考えているからです。

偉大な酒には蔵元の思い、気候、米、さらに酒造りに使われる素材のバックボーンが組み込まれている必要があると思います。

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