気候変動に適応する農業と環境対策として
フランス最大のワイン産地、ボルドーが気候変動に適応したワイン造りに向けてかじを切る。ボルドーワイン委員会は、ボルドーのAOC規定に7品種のブドウを導入すると9月下旬に発表した。
これは、フランス産ワインの品質管理団体“INAO”が2018年11月に採択し、今年5月に同団体の機関誌で発表した農業・環境対策を受けたもの。AOCボルドーとボルドー・シュペリュールのワイン生産者連合は6月の総会で、気候変動に適応したブドウのAOC規定への導入を承認した。
新たに承認されるのは赤ワイン用が1950~60年代にフランス国立農学研究所によって開発された「アリナルノア」と「マルセラン」、フランス南西部原産の「カステ」とポルトガル原産の「トウリガ・ナショナル」の4品種。白ワイン用は「アルヴァリーニョ」「リリオリア」「プティ・マンサン」といずれも灰色カビ病に強くアロマティックな3品種だ。いずれも今後数カ月以内にINAOによる最終認定を経て正式導入となる模様だ。
2030年代以降を見据えた次なる一手
ボルドーではほかの地方同様に、生産者が気候変動によるワインの品質への影響を認識していた。平均気温の上昇による影響はブドウの生育期間の短期化に表れ、収穫は過去30年で20日間早くなっているという。熟成の早期化も顕著だとされている。今後のさらなる気温上昇によりボルドーワインの特徴に影響が及ぶと予想されていることから、農法やブドウの選定方法、醸造学上の慣習などと共に導入される戦略の一つが、新たなブドウの承認だった。ピノ・ノワールやシラー、シャルドネなど、ほかのワイン生産地における代表的な品種を避け、すでに公式にフランスで認定されている品種などいくつかの基準の中で選ばれたのが前述の7品種である。
AOCの規定では、これらのブドウ品種は補助品種として指定されており、作付面積は5%までとされている。また、ブレンドする際の総使用割合は10%までと規定されており、品種のラベル表記は認められていない。これはワインラベル表記に関する法的規制に基づいている。これらの品種は20年から21年にかけて植樹される予定で、ボルドーでは広範囲のブドウ畑で見られる気候関連の変化を把握することで、中長期的な開発の可能性を探り続ける構えだ。