2019年に行なわれた香港の“アートバーセル”では出展すると共に、「Ink and paint/ Uncovering Asian Modernisms(水墨と絵画:近代アジアの再発見)」をテーマとしたトークセッションにも登壇した(画像提供:Screenshot of video, courtesy Art Basel)
山本 豊津 氏 Hozu Yamamoto
東京画廊BTAP 代表。全銀座会催事委員会委員、アートフェア東京シニアアドバイザー、日本現代美術商協会理事、現代美術商協会(CADAN)副代表理事、武蔵野美術大学芸術文化学科特別講師
武蔵野美術大学造型学部建築科卒業後、衆議院議員村山達雄氏の秘書を経て、1981年より家業である日本初の現代美術企画画廊「東京画廊」に参画、2000年より代表を務める。世界のアートフェアへの参加や、展覧会や都市計画のコンサルティングも務める傍ら、日本の古典的表現の発掘・再発見や銀座の街づくり等、多くのプロジェクトを積極的に手掛け、若手アーティストの育成や大学・セミナー・講演等、アート活性の分野でも幅広く活動。14年より4年連続アートバーゼル(香港)、15年にアートバーゼル(スイス)出展。著書に『アートは資本主義の行方を予言する』 (PHP新書)、『コレクションと資本主義』(角川新書)
■IR 時代を迎える日本にどのような見解を持たれていますか?
IR に関しては具体的な内容がまだ決まっておりませんから美術・芸術業界とどのようにかかわってくるのかという点については分からないというのが正直なところです。ただ“周辺産業の活性化”という点においてはいずれの場所にIR施設ができるにせよ、都心部にできることが決まれば、“中央区、千代田区”といったロケーションはインバウンドにおける東京観光に大きくかかわってきますから関係各所、既にいろいろと動きがあります。
特に歌舞伎座をはじめとした大型の劇場がこのロケーションには多くありますので、芸術団体協議会では一体となって銀座、丸の内、日比谷といった場所でいかに遊んでもらうか? それをどのように認知・集客に結び付けるのか? ということを考えはじめています。これはIR もそうですが、その前の東京オリンピックおよびパラリンピックも含め将来を見据えて取り組んでいます。
一方、美術業界から考えると銀座には多くの画廊があり、多岐にわたったジャンルのアートを取り扱いしておりますので、その“地の利”をいかに生かすかという点も課題となっています。こちらはカード会社の顧客サービスやコンシェルジュサービスとの連携など既にお客さまへの対応ができつつある部分がありますのでそういったチャンネルの強化を図ると共に、今後のインバウンド来日数の増加につれて外国語での対応やそれぞれの店舗規模の生かし方などが課題であると考えています。
また総論といった形の意見になりますが、IR を成功させるために日本はもっと文化外交力を強化するべきだと考えています。これは行政や専門家が取り組むのはもちろんですが、民間交流においても日本人全体がもっと日本の文化や伝統、歴史に対する知識や理解を深めて出迎えることが必要だと考えると、そのためには私たち日本人が一つでも多くの“いいもの、本物”を見る機会を持っていただけるとよいと思いますし、そういった知見の上にIR 施設のコンテンツを作ることが“我が国のIR 市場に外国人が足を運ぶ動機づけ”に有用であると考えています。
「2019年の“アートフェア東京”では古美術通りを作りました。日本は縄文、弥生時代のものから古美術がそろうのが魅力です」と山本氏。外国人や若者など多くのファンが足を運んだ