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第12回 本誌 松沢良治 ニュースな話&人物クローズアップ

日本の祭り

【月刊HOTERES 2015年08月号】
2015年07月30日(木)
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埼玉県・久喜の提燈祭り。夜は四面に提燈をつけた山車を曳き回す。 午後8 時すぎには久喜駅西口ロータリーに、提燈山車が集合して、山車を近づけあったり回転したりする

 7 月は台風の当たり年かと思うほど次々と大雨に見舞われた。それにいやになるほどの蒸し暑さ。何もしなくともジトッと体が汗ばんでくる。下着が体にまとわりつきこの上ない不愉快さを感じる。
 
 こういうときは気晴らしが必要だ。というわけで夏祭りに出かけることにした。たまたま埼玉県・久喜市で日本の提ちょうちん燈祭りでも有数と言われている「久喜提燈祭り」が行なわれている。毎年7 月の12 日と18日に行なわれる壮大な祭りで山車の曳ひき回しなどは迫力満点。夜になると山車に飾り付けた500 個の提燈に明かりがともり、祭り気分を盛り上げてくれる。当日は7 台の山車が町内を練り歩いた。
 
 開催日は毎年7 月の12 日と18 日と決まっており曜日に関係なく開催される。230 余年の歴史がありこれまで一度も途絶えたことがない伝統の祭りだ。
 
 久喜は江戸時代、日光街道などさまざまな街道が交錯し、農業、商業の街として栄えた。天明3(1783)年浅間山の大噴火によって作物が甚大な被害を受けたため、豊作を祈願して山車を曳き回したのが祭りの始まりと言われている。巨大な山車には見事な提灯が彩られており、お囃子の音色が夏の夜を魅了し続けている。
 
 同じころ周辺の街ではそれぞれの祭りが開催される。その多くは土曜日、日曜日に合わせた祭りであるがひところと比べにぎやかになっているようだ。地方の時代と言われて地域活性化の現れの一つであろうか。いずれにせよ祭りを通して地域住民が結束を強めていくのは素晴らしい。
 
 祭りと言えば必ず思い出すのが「青森ねぶた祭り」。40 数年前の学生時代、貧乏旅行の末にたどり着いた青森。そこでたまたま出会ったのがねぶた祭りであった。当時は今のように観光客は少なくだれでも自由に踊りの輪に入ることができた。ラッセラー、ラッセラーと声をかけ跳ねながら踊る。踊り子たちをハネト(跳人)と呼ぶ。そのハネトに混ざり夜遅くまで踊ったのだ。そうした記憶、終わってからの疲労感、近くの合浦公園での野宿などを懐かしく思い出す。考えてみれば贅沢な体験であった。旅人を快く迎え入れ一緒に踊ってくれた。祭りの一体感は旅人の心をも満たしてくれた。祭りの持つ本質も実は人々の一体感を生み出し、明日への活力を呼び起こそうとするものではないか。祭りにはプラスのエネルギーがあり、生活環境が厳しければ厳しいほど絶やすことなく世代間を引き継いできたのではないか。特に大飢饉に遭いながらも生きてきた東北地方での祭りを見ているとそう感じる。
 
 ちなみに最近ますます人気のある東北四大祭りは「青森ねぶた祭」(8 月2 日~7 日)、「秋田竿燈まつり」(8 月3 日~ 6 日)、「仙台七夕まつり」(8 月6 日~ 8 日)、「山形花笠まつり」(8 月5 ~ 7 日)。どれも見ているが、やはり最も面白かったのが青森ねぶた祭りであった。
 
 今後行ってみたい祭りは「おわら風の盆」。富山県富山市八尾地域で300 余年踊りつがれてきた祭りだ。本祭は毎年9 月1 日から3 日にかけて開催される。本祭前の前夜祭として8 月20 日から30 日までの11 日間、午後6 時半から始まり風の盆の上映会・踊り方教室・踊りの鑑賞会が行なわれる(有料)。その後、毎夜11 町が交代で20 時より自町内にて町流しと輪踊りまた舞台踊りを22 時まで行なっている。輪踊りには一般観光客も輪に入り踊ることができる。
 
 ほかの一般的な祭りと違い哀切感に満ちた旋律に乗って、坂が多い町の道筋で無言の踊り手たちが洗練された踊りを披露する。年間約30 万人の観光客でにぎわう祭りだ。

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