特集記事で紹介された最新ホテルデザイン実例。日本で第1 号のキュレーションホテル熱海桃乃八庵
「必ず成功するホテルリノベーションPART11」刊行記念シンポジウム(主催/オータパブリケイションズ、協賛/ Louis Poulsen 、YELLOWKORNER)が2018 年10 月30 日、東京・港区六本木のYELLOWKORNER で開催された。ホテルの「進化と変化」を大テーマに、主にデザインとアートの視点から、世界的なトレンドに対して日本のホテルができること、やるべきことについて、ホテルに関わる専門家たちがディスカッションした。
デザインとアートの境界領域こそが
ホテルにおける
空間デザインの最先端
「必ず成功するホテルリノベーションPART11」刊行記念シンポジウムの冒頭、主催者挨拶に立ったオータパブリケイションズ専務取締役経営調査室長の村上実は「途中2年間キッチンにフォーカスした『プロフェッショナル・キッチン』も合わせて、『必ず成功するホテルリノベーション』は13 年間、ホテルにおけるリノベーションという視座に立ちながら、さまざまな専門家にご意見をいただきました」と述べた。
「従来とは異なる新しいものの見方、捉え方について皆さまと議論することで、日本のホテル業界を少しでも前進させたいという主旨のもと刊行しています。日本のホテル業界が隆盛を極める中、正しく、より素晴らしい方向に導くためのヒントを提示するべく今後も多くの方々から知見をいただきたいと思います」
スペシャルトークセッションは、長年日英でインテリアデザインコンサルティングとプロデュースを手掛ける澤山乃莉子氏を迎え、村上実との対話をベースに進行した。澤山氏は2018 年10 月に英国ロンドンで開催されたデザインショー「パッドロンドン」にみられる最先端の空間セッティングを映像で紹介しながら、「ホテルデザインの分業化とダイナミズム」「デザインとセグメントマーケッティング」のテーマについて講演。「アートとデザインの境界線をいくエッジーな領域こそが、これからのホテル空間において高く評価されるデザインの最先端ということになります。ここでは非常にアーティーな空間で、特異なキュレーションが行なわれています」と述べた。ロンドンのトレンドとして注目すべきは、「ブティックホテル」「サスティナブルホテル」「キュレーションホテル」だという。
これらのカテゴリーにおいてユニークな流れを形づくっているのは、インディペンデントのホテル群。これらのホテルからは、明確なテーマとそれを反映するデザインコンセプトを見て取ることができる。さらにブランディングの部分で魅力を発信する力も非常に強く、空間の映像を見れば誰もが「このホテルだ」と特定できるところまで来ているという。そうした特徴を持つホテルが、現在のロンドンのデザイン領域を牽引している。
デザインに強いホテルは明確にターゲットを定め、セグメンテーションを行なっている。「私たちはこのお客さまにしか来てほしくない」という姿勢でデザインする創り方をしているのだ。そのホテルが提供するデザインを心地いいと感じ、その対価を支払ってくれる人々だけが集まってくれればいいという考え方をしているのである。