ボーダーレスの時代を迎えた今
サスティナブルを追求しなければならない
「私は“お見合いおばさん”になりたいなと思っています。山下PMC ではプロジェクトごとに、毎回デザイナーのリストを作り事業者に提案しています。ただ、私も業界が長いので、この案件はどのデザイナーに依頼すればマッチするかということが勘どころである程度わかります。リストによる選択のプロセスを数ヶ月短縮できれば、他のところに時間とお金をかけられるようにできるはずだと考えているのです。事業者とデザイナーの縁談を成功させる立場として、存在感を高めていく方向を目指します」(深瀬)
「デザインホテルが日本に普及するか否かについては、日本人の価値観によって決まってくるのだと思います。海外にはデザインを評価する価値観が根付いているけれども、日本にはまだ根付いていない。ただ、これだけグローバル化した時代を迎えて、特にホテルには多くのインバウンドが訪れています。デザインの価値を求める人々が世界中から訪れていることが明らかになってくれば、日本におけるデザインホテルの事業採算性は向上するでしょう。結果的にそこにお金が集まりますから、今後はそういったホテルが増えていくのではないかと期待しています」(内藤氏)
村上はまとめとして「海外、国内という見方は既に終わっていて、ボーダーレスの時代を迎えていると思います。これから私たちは“地球”という感覚を持って動いていかなければならないということです」と述べた。
その感覚に基づいてホテルを創っていくためには、環境に対応しながらサスティナブルな方向性を追求する必要がある。ところが持続性のあるホテルの環境条件に関する日本の産業障壁は非常に高く、ホテル業界はこの課題に関してもっと豊かに議論を積み重ねていく必要に迫られている。
ホテルにおける「進化と変化」について、主にデザインの側面から切り込んだシンポジウムは、日本における規制の問題なども含めたマクロな視点からのアプローチにも議論が及んだ。その結果、ホテルに関わる多くの人々に、未来に向けたメッセージを伝える役割を果たして幕を閉じることになった。