さまざまな料理人がいる中で、一人一人が持つ苦悩と挑戦の数々の物語がある。ホテル・レストランの総料理長が食の業界や若手の料理人に向けて伝えたいことは何か。これまでの長い経験の中で、どのようなことに悩み、どのようなことを考え、どのようにチームを創り上げてきたのか。インタビューを通じて後継者育成に向けた取り組み、マネジメント手法などを探るシリーズ「料理人の教育論」を月一連載(第4 週号掲載)でお届けする。
中井 茂義(なかい・しげよし)
1967 年9 月生、北海道士別市出身。83 年調理の道に入り、札幌市内のレストラン・ホテルにて経験を積み、料理長を務める。2006 年ホテルオークラ札幌に入社し、宴会料理長、コンチネンタル料理長を務める。18 年7 月総料理長に就任し、現在に至る。
プレッシャーは人を成長させる糧
緊張感ある職場づくりをモットーに
―中井総料理長は旭川の北部に位置する士別市の出身だと伺いましたが、地元を離れ札幌で働かれることに対してはどのような想いや目標をお持ちだったのですか。
私のキャリアのスタートは、実は当時流行だったカフェバーのサービススタッフでした。ところがデシャップ越しに映る料理人の姿に強いあこがれを抱き、合間を見つけては厨房の中で料理の修行を開始し、気が付けば一人の料理人としての歩みを始めていました。旭川の街場のレストランで修行に励んでいましたが、料理を作る楽しさ、お客さんに召し上がっていただくよろこびを重ねるうちに「もっと大きな舞台で活躍したい」「いろいろなものを見聞きしたい」という想いが溢れ、札幌という道内一の都市で働くことを決意しました。