明確にターゲットを絞り込む勇気
 
❒ 営業上の戦略について教えてください。
 
　まず特徴と言えるのは、365 日同一料金という点です。これは先ほども申し上げましたが徹底的にリピーターのお客さまを大切にしたいという考えから行き着きました。価格の安易な変更はお客さまへの裏切りと同じだと思っています。いつも安心・信頼をして金沢彩の庭ホテルにお越しいただきたいと考えています。
 
　また、このホテルには、団体の取り込みを目的としたセールスのスタッフはいません。それは金沢彩の庭ホテルは明確にコンセプトが定まったホテルだからです。このコンセプト共感をいただけるのは、100人いらっしゃったら１人くらいではないでしょうか。そのくらい思い切った取り組みをしています。
 
　団体のお客さまというのは、特に「このホテルがいい」ではなく、ホテルを「何となく」選ばれてしまう。そこは勇気を持って「金沢彩の庭ホテルに泊まりたい」と思っていただける方にだけお越しいただけるようにしたいと考えたのです。正直、経営だけを見れば団体のお客さまをとりたいときはあります。そこをぶれずに、明確にターゲットを絞り込むことが、長い目で見て大切ではないかと考えています。
 
　こういったことができるのは、地元資本で短期的な収益ばかりを求めず、地元への貢献を考え、このコンセプトを理解していただけるオーナーあってこそとも言えます。
 
❒ 開業して3 カ月、立ち上がりの状況はいかがでしょうか？
 
　まず、初年度の目標として、売上高３億5000 万円（298 日計算）、稼働率75％、ADR2 万4505 円、DOR（ダブルオキュパンシーレート：同伴係数）2.18 人を掲げていますが、3 月～ 5月の状況は、稼働率65.5％、ADRは2 万2862 円、DOR2.18 人となりました。目標稼働率の75％は6 月に到達できればと考えておりましたが、5 月だけで見ると稼働率は76.5％となり、予定よりも1 カ月早く目標稼働率を達成できました。また、じゃらんnet の口コミも5 月末時点で近畿・北陸地区総合1 位にランクされるなど非常に高い評価をいただいています。
 
　お越しいただいているお客さまは、カップルや家族連れ、女性中心のグループのお客さま、ビジネスのお客さまと幅広く、特にビジネスのお客さまは全体で12 ～ 13％と当初の予想よりも多くのお客さまにお越しいただいています。また、外国人比率は5％程度を想定しておりましたが、すでに7 ～ 8％と予想よりも高く推移しています。主に欧米、香港、シンガポールからのお客さまが多いですね。
 
　今後は、夏にはレジャーのお客さまの増加が期待でき、そして秋はコンベンションシーズンですから、さらなる上乗せが期待できると見ています。
 
❒ 順調なスタートを切られたようですが、さらなる今後に向けての取り組みについて教えてください。
 
　サービスのレベルアップはまだまだできると思っています。良いスタッフがそろっていますが、まだ原石を少し磨いたところで、もっと高いレベルを目指せると思っています。「金沢に行くから金沢彩の庭ホテル」ではなく「金沢彩の庭ホテルに行きたい」となっていただけることが目標です。そのために、スタッフの仕事の幅も広げていきたいですね。例えばフロントスタッフが朝食のサービスができ、朝食のメニューをしっかりと説明できればチェックインのときの会話ももっと広がります。それぞれのスタッフがいろいろなことができる多能工のサービスを強化していきたいと考えています。

本郷 一郎 氏
(Ichiro Hongo)
1957 年金沢生まれ。81 年早稲田大法学部卒。地元金沢市の北國新聞社で編集部、社会部、七尾総局勤務後、富山県西部経済を担当。89 年より金沢全日空ホテル開業準備室に移り、広報、企画、マーケティング、営業を担当。副総支配人、セールス＆マーケティング部長を経て、2013 年３月より髙田産業㈱へ入社。金沢彩の庭ホテル開業準備室長を経て、開業後より㈱金沢彩の庭ホテル代表取締役社長兼同ホテル支配人。