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第十八回 島田律子氏 × 出羽桜酒造㈱ 代表取締役社長 仲野益美氏 伝統は“守る”のではなく“創る”もの 

第十八回  山形の地から、圧倒的大差の品質を持つ 分かりやすい日本酒を出し続けよう

【月刊HOTERES 2018年06月号】
2018年06月08日(金)
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日本酒造組合中央会認証「日本酒スタイリスト」として精力的に活動を続けるタレントの島田律子氏が、日本の伝統文化、日本酒の魅力を深く伝えることで、海外からのお客さまをおもてなしするホテル、レストランの力を向上させるためのヒントをお届けしていく本連載。今回は山形県天童市で130 年日本酒を造り続ける出羽桜酒造株式会社の代表取締役社長、仲野益美氏にご登場いただいた。出羽桜が掲げる五つのポリシー、「地元でしっかりとした市民権と存在感のある酒」「圧倒的大差のある分かりやすい品質」「お客様の手の届く適正な価格設定」「他の酒の犠牲の上に立った吟醸酒でないこと」「利益の社会還元」を礎に地元からの支持を大切にしながら、次世代にバトンをつなぐために世界のマーケットを視野に入れた発想で取り組みを積み重ねる仲野氏の情熱。オータパブリケイションズ代表取締役の太田進を交えた鼎談を3回連続でお伝えする。


スマイル ブリュー カンパニー 代表/日本酒スタイリスト 島田律子氏  出羽桜酒造㈱ 代表取締役社長 仲野益美氏

島田 律子(しまだ・りつこ)
スマイルブリュー カンパニー代表・タレント・日本酒スタイリスト(日本酒造組合中央会認証) 日本酒の魅力を伝える講演・イベントの司会や出演など、年間100 本以上をこなす。TV 出演や雑誌などへの執筆も多く、そのエンターテイメント性の高さと分かりやすさから、ファンやリピーターが多い。飲食店や百貨店の売り場プロデュースの依頼も多く、NAGAE +『TRAVEL CHOCO』など酒器を始めとした商品開発や、女性ならではの視点から日本酒の美容・健康効果に着目。日本酒美容を取り入れた日本酒美容コスメ『MAIDEALE』をプロデュース。
 
仲野益美(なかの・ますみ)
1961 年山形県天童市生まれ。84 年東京農大農学部醸造学科卒業。86 年家業の出羽桜酒造㈱入社。2000 年同社社長に就任。東京農業大学客員教授、東京大学大学院非常勤講師、山形県酒造組合会長、日本酒造組合中央会海外戦略委員長、一般社団法人ミス日本酒顧問、山形県ブランド特命大使などを務める。入社以来、毎年大吟醸造りを担当し、今年で31 年を迎える。全国新酒鑑評会、東北清酒鑑評会の結審審査委員など歴任。

地元の厚い支持を受ける酒蔵でなければ、
信用を得ながら存続することはできない
 
島田 出羽桜が大切にしていることを教えてください。
 
仲野 出羽桜には約130 年の歴史があります。歴史を積み重ねるために最も大切なのは「信用」であり、それは一代だけの短期間で築くことはできません。信用を得るために先代から後継者へしっかりとバトンタッチしていくこと、それがファミリー企業に求められる姿です。もう一つ大切なのは、「存続し続けること」です。一時的にブランド力や営業成績が上がることよりも、次の代にも存在し続けることが重要なのです。
 
 信用を得ながら存続し続けるためには、地元の厚い支持が必要です。出羽桜が掲げる五つのポリシーのうち、一番目に挙げているのは「地元でしっかりとした存在感があること」です。地元で評価されていない日本酒は、東京に行っても大阪に行っても、ロンドン、ニューヨークに行っても評価されることはありません。一杯の酒で人をうならせるのは、もしかしたら簡単なことなのかもしれません。しかしそれよりも大切なのは、人々に飲み続けていただきながら、しっかりとした評価をいただくことです。その流れを実現するために、ホームグラウンドにおいて存在感のある会社でありたい。それが私たちにとって一番のポリシーとなっているのです。
 
 次に出羽桜がメーカーとしてどのような「品質」を志向しているのかについてです。基本的には「圧倒的大差の品質を持つ、分かりやすい酒を出し続けよう」という思いで酒造りを行なっています。香りや味のわずかな差をマニアックに追求することよりも、同じ価格帯の中でしっかりと自分たちの主張をすることで、商品の特徴が色濃く出るような酒を提供していきたいのです。
 
 品質というものは価格と相まって評価されるものだと思いますので、「お客さまの手の届く価格を設定する」というポリシーも掲げています。将来的な輸出展開を考えるとさらに上のクラスの酒についても視野に入れていかなければなりませんが、そのベースとなるホームグラウンドで普及させる酒については、品質に見合った価格設定がポイントとなります。

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