「こむぎっち」の成功は、売店コーナーのスタッフはもちろん、レストラン、軽食コーナー、ベーカリーのメンバーにも、なりたい姿の共有を促していった。副支配人が発信していた「埼玉を代表するサービスエリア」を形にできた瞬間は、具体例をスタッフに示すとともに、創意工夫の指針になっている。
誰だってはじめてやる取り組みはゼロからのスタートとなる。商品開発をしてくれる工房を探し、手書きのPOP をつくり、接客販売し、分かったことで商品を改良する。この流れは今まで仕入れ先の仕事だったから分からない内容だらけ。はじめての商品開発の成功は、仕事を一巡させることが分からなかったスタッフにとっての、モデルにもなった。
今では、軽食コーナーの姫豚わらじかつ丼、上里うどん、上里らーめん、これらをめがけて高速道路が渋滞していても上里まで待ってから昼食をとる人がいるくらいにお客さまを引き付けている。そしてテナントの牛丼チェーンに取られていた客を取り返すまで力のある商品に仕上がっている。単純な価格なら3 倍のレストランの姫豚丼は、月間ナンバー1 商品になっている。
旅の目的地になるための創意工夫をやめないためにリーダーの菅田さんは、いままでのルールに縛られないやり方を現場に推奨しサポートを行なっている。新しい仕事は新しいやり方で臨まないと定着しにくい。
スタッフが売るとつくるを兼ねる一人二役の役割の推進。必要であればパート社員さんが他社へのベンチ―マークも行なう。やりたい人がやれる権限委譲、研究する時間をシフト上に確保するなど、これらの工夫で、新しいことに挑戦する時間と知識を補っている。
パートさんのリーダーシップで売店コーナーの川越いもきんつばとこむぎっちは、売り上げ20%を占める二大名物商品までに成長した。「私たち上里ブランドの商品です」と胸を張って言える仕事は、待ちが中心だった彼らの仕事を根本から変えた。
他社の知名度に頼らず、たまたまの通行客の増減に一喜一憂しない、自分たちが来てくれる魅力をつくり結果につながる。このようなビジネスの姿勢、仕事のやりがいをもたらしている。高速道路は通行量次第で売り上げが決まる。おみやげは名前で買うもの。低価格の牛丼とは勝負ができない。といった昔の思考の枠は、今はない。
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岡村衡一郎 サービス・イノベーション48手-PART2 ~現場と本部が一体で進めるイノベーション~
080 たまたまの通過点から旅の目的地へ
【月刊HOTERES 2018年03月号】
2018年03月09日(金)