日本で欧米スタイルのウエディングを作り上げてきた第一人者である㈱スティルサンク 代表取締役 濱野紹央子氏。ウエディングプロデューサーとして数多くの結婚式を手掛けてきた。実績を積み上げていく中で“ ウエディングプロデューサーでござい” と豪語することなく、人間としてあるべき正しい生き方を貫き通してきた。ところが世の中が急速に変化していく中で、これまでひたむきに取り組んできたこと、思い、考えを伝えていくことが使命であるとし、『ヒューマンプロトコール』と題してペンを執ることになった。今回はプロローグとしてその思いをお聞きした。
㈱スティルサンク 代表取締役
濱野紹央子
〈プロフィール〉幼い頃から華道、茶道、能に親しみ日本の最高のおもてなし文化を身につけながら育つ。大学在学中には皇太子殿下(現天皇陛下)が名誉総裁を務められた団体より日本の代表として全米を訪問し 日本の文化を伝えるとともに欧米の文化を学び帰国。自身の結婚式の時に全てをセルフプロデュースしたことをきっかけに、日本国内はもとより欧米での研修・視察・資格取得を重ね、欧米スタイルの独立型ブライダルコンサルタントのパイオニアとして活躍。名門ホテルのブライダル再生事業や企業コンサルティング、講演活動、個人客のウェディングプロデュースなど数多く手がけている。最近では国土交通省観光庁「産学連携による観光産業の中核人材育成・強化事業」の「ホスピタリティ産業における女性の活躍と組織づくり講座」におけるカリキュラム検討委員を務める。
―日本に限らず、世界的にさまざまなことが急速に変化しています。島国日本も島国だけの生活様式では済まされなくなり、国際的な交流が余儀なくされています。その一方でスマートフォンなどの通信機器が発達し、向こう三軒両隣という日本ならではの人間関係も薄れ、どこかギクシャクした世の中になっています。
濱野 人生、そして会社ともにイキイキとし、成長していくためには良好な人間関係を構築していくことが不可欠です。そのためには表面的ではなく本当に相手を思う優しい心や親しき仲にも礼儀ありで、人と人がともに生きていくために大切な基本的なマナーや言葉遣いなど、今、忘れられつつあることをもう一度見直すときがきたように思います。2020 年の東京五輪開催に向けて日本はますます視野を世界に広げ、人々と接していかなければなりません。特にホテルやサービス業に携わる方にとっては世界共通の国際儀礼であるプロトコールを学ぶことも欠かせないことでしょう。しかしながら、単に儀礼を学ぶのではなく、その奥にあるヒューマン、人としての心を磨くことが大切です。その心なくして本当の意味で良好な人間関係を構築することはできないからです。世の中にはいろいろな人がいます。いろいろな人がいることを認めるとともに、それぞれにどこで折り合っていくのか、どのように接したら皆がハッピーになるのかを考えていかなければなりません。
―人間関係が活発な企業は活気にあふれ、必然的に業績も伸ばしています。低迷しているところは部下に対する上司の言葉や態度など、自分を守るがための言動や、モチベーションを下げるようなパワハラなど、人としての思いやり、優しさに欠けています。
濱野 人手不足の中、辞めない会社を考えていかなければなりません。そのためにはスタッフの気持ちや能力を理解し、それぞれの持ち味を引き出していかなければなりません。ウエディングにおいても同様です。お客さまが求めていることを引き出し、それをどのように表現して差し上げたら良いのかを常に考え、ご提案し続けていかなければなりません。私はこれまで一組一組のお客さまに対してつねに全精力、魂を込めて向き合ってきました。それが人と人が永遠につながっていくために欠かせないことだと思っています。“仏作って魂入れず”では人の心に響かないのです。今回は形式的な国際儀礼ではなく、その奥にある人としての心の部分の大切さを仏教の教えや心理学、人間学、歴史などさまざまな角度から紐解いていきます。「ヒューマンプロトコール」を通じて、人生も会社も、そして日本も世界もイキイキとした世の中になることを願ってペンを走らせてまいります。よろしくお願いいたします。