石を巡る最近の動向
石は、木材とともに主要な建築材料の一つです。堅牢さや、豪華さでは木材に勝る一方、使い方を間違えてしまうと、冷たく居心地の悪い建築にもなりかねない材料でもあります。石材の選定に当っては、設計の当初から適材適所のルール(図2)があると言っても良いでしょう。また時代とともに、工法の概念も(積むから張るへ、さらに取付ける、接着するに)変化し、往年の銘石が市場から消え行く中で、真新しい石材が見知らぬ産地から採掘されて来るのも現実です。アジア向けの石材は、今や最新情報を得るにはシンガポールが、加工製造では中国が拠点となりつつあります。こうした石材を取り巻く変化の中で、いかにしてより良い石を安心して選定するか、採用すべき石の素性を見定めることが(図3)、ますます重要となってきています。
安全に作る在来の工法と新しい工法
組積造(石積造)の建物が日本では普及していないお話はしましたが、壁や床に石を張った建築は、街の至る所に見られます。これらの建築に用いられる石張り工法は、時を経て、今では外壁が二つ、内壁では三つの工法が( 図4) 採用されています。阪神大震災の教訓から、石張りの外壁は乾式工法⒝が主に用いられ、一部の復元修復工事や局所的な外壁(腰壁等)に湿式工法⒜が採用されています。地震時の石材の剥落・落下事故を防止し、安全の向上を図るには、適切な工法の採用が不可欠となっています。近年、大判の一枚石(1m 超× 2m 超、厚さ10㎜程度の石)を内壁に安全に張る工法として、石張りのアルミハニカムパネルを用いたメタルレールファスナー工法⒟が普及し始めて来ています。安全・安心の向上はもとより、「石材製品」の品質の安定性も今後の課題として、見極めて行く必要があると思います。
公益社団法人国際観光施設協会編 観光施設メディアラボ
ホテルの安全・安心21 石材の今と維持管理
【月刊HOTERES 2018年01月号】
2018年01月19日(金)