“なんくるないさ~”沖縄の方言としてよく聞かれる言葉の一つだ。刹那的に何とかなるという意味ではなく、“くじけずに正しい道を歩むべく努力すれば、いつか良い日が来る”というのが本来の意味。まさにこの言葉の通り海を越えて飲食店経営に乗り出し、そして50 歳の誕生日を機に、あらたなチャレンジを始めた人がいる。それがBRIDGES又吉真由美社長だ。天真爛漫、常に前向き、スピード力の中、国境を超えた人材育成についてお聞きした。
福永 又吉社長は沖縄と海外で飲食店を多店舗経営されているとお聞きしました。はじめに現状と飲食店を始められた経緯をお聞かせください。
又吉 現在経営しているのは沖縄の飲食店のみです。先日、2000 年からスタートした海外店舗は身内に受け渡ししました。シンガポール、香港、ジャカルタ、マカオ、クアラルンプール、上海に約30店舗ありました。もともと25 歳のころアメリカでレストラン経営をしたいと計画していましたが、いきなりアメリカへ飛び立つのは難しいという判断から、親族が生活しているシンガポールにて沖縄料理が食べられる居酒屋感覚のお店を開業しました。沖縄からの食材輸入の貿易実務、人材採用、管理などすべてかかわりましたので、さまざまなことを学びました。
上海では生活が豊かではない方々を採用したことから、お店の前で髪を洗ったり、のれんを物干し代わりに使ったりなど、本当に驚くことばかりでした。ときには平気でお店で唾をはいたりしてしまうこともあります。シンガポールは国が手厚く国民を保障していますので性格的にのんびりしていて、チームで仕事をするということを重視しました。その点、香港はまさに商人の街であり皆、何か大きなものを獲得したいという意識が高く、ハングリーです。ポジティブなだけに一人一人の能力を発揮させるよう努めました。
福永 それぞれ国によって習慣や国民性が異なりますので、マナーや指導法もそれに合わせて、変えていかなければならないのですね。実際に、どのように指導をされてこられたのでしょうか。
又吉 私は社長ではなく皆と同じ仲間ということを理解してもらうようにしています。そのため社長ではなく“MAYUMI”と名前で呼んでもらっていました。皆で一緒に創り上げていくという雰囲気、空気を作ることが大切です。国によって生活環境が異なりますので、一律には指導することはできませんが、国を超えて共通しているのは何か不備を見つけたらその場で注意をすることです。”後で注意しよう“と思っていたらなかなか思うようにコントロールすることはできません。何が悪いのか、お客さまからみてどのように思われるのかなど、お客さまの立場から物事を判断できるよう、できるようになるまで見つけたらその場で注意をすることを続けていくことです。自分がやってほしいと思ったことは進んで行ない、やってほしくないことはやらないことも教えます。上海ではお化粧室をメルヘン的な女の子のような空間にしました。清潔だけではなくメルヘン的な部屋にすることで、自然に清潔に使わなくてはいけないという意識になり、お客さまが汚したときでも清掃することが当たり前になってきます。愛着を持たせることで自然に行動が変化することも上海で学びましたね。