

最近、ホスピタリティ産業の方とお会いするたびに、「人が足りない」ということを言われる。労働集約産業であるホスピタリティ産業において、人が足りないという状況は、そのまま提供されるサービス品質の低下にもつながりかねず、大変ゆゆしき問題であると考えられる。せっかくインバウンドの増加で観光客が増えても、提供する側がそれに追いついていかなければなんの意味もない。政府は、女性の活用による人手不足解消を目指しているが、特に管理者層においては女性が十分に活用されているとはいいがたいのが現状である。事実、さまざまな調査により、女性の管理者層はきわめて少ないという現状が明らかになっている。そのような中で、東洋大学では、観光庁の「中核人材育成・強化事業」において女性のキャリアを意識した講座を開講することになった。その背景となった大学でのご経験や旅に対する考え方などを、カリキュラム検討委員会委員長の森下先生にうかがった。
「旅を教える」ということ
徳江 このような形で森下先生とお話しするのも不思議ですね。が、今日はしっかりとインタビューさせていただきたいと思います。
森下 はい、お手柔らかにお願いします( 笑)
徳江 私もよく訊かれるのですが、改めて、先生はなぜ教壇にお立ちになることになったのでしょうか?
森下 実は私、1 年間仕事を休んで、専業主婦をしていたこともあるんです。そのとき、このまま仕事をしなくなると、これはあくまで自分の場合ですが、どんどん取り残されてしまいそうという危惧を感じたんです。それで、たまたまお声がけいただいた専門学校の教員をさせていただいたら、これは面白い仕事と思いました。前後して、日本国際観光学会との関係も生じ、その流れで大学教員になりました。
徳江 本学には、なかなか面白い経歴の先生も多いなと思うのですが、先生もやはりそうだったのですね。
森下 ヒトのこと言えませんよね?( 笑)