2020 年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて毎月一回「服部幸應の2020 東京大会対談」をお届けする企画です。オリパラで必要になるのは1400 万食。食材の安全性などに国際基準が求められ、その対応に関係者は頭を痛めている。最も大事なのは食材だが、日本独自の安全・安心な農産物の証しであるJGAP を国際基準に合わせるにはどうすればいいか。本日お迎えするのは認証機関であるインターテック・サーティフィケーション㈱代表取締役の坂井喜好氏。
ISO を知り、目からうろこ
❐ 今回で3 回目になるオリパラシリーズは、JGAP などの審査認証登録機関として制度発足当時からかかわっているインターテック・サーティフィケーション㈱の坂井喜好社長をお迎えしました。坂井社長は農家の出身であり、JGAP 認証に最初に取り組んだ認証機関の代表を務めておられます。また、検査や認証登録機関の仕事も長く続けておられます。
坂井 私は貧しい農家の3 男として生まれました。そんな農家でもJGAP 認定によって消費者から信頼を得て、希望と誇りを持ちながら安定した農業経営ができるようになれば、そしてそのための触媒となってつくしたい、という思いが原点でした。そのためには、審査料金を最大限に抑えなければ。この動機が出発点です。JGAP の前に、当社はISO などの国際規格の認証機関として活動しておりました。
❐ISO をもう少し詳しく説明ください。
坂井 日本工業規格のJIS という言葉はご存じと思いますが、それの国際標準規格をISO(アイエスオー)と言います。国際標準規格を策定するための非政府組織の本部がスイスのジュネーブにあります。ISO は、現在162 の標準化団体が加盟する、独立した非政府組織です。また、国際標準の世界最大のボランタリーな開発組織で、その目的は、国家間に共通の標準を提供することによって、世界の貿易を促進することです。約2 万種類ある規格は、マネジメントシステム、工業製品や技術、食品安全、農業、医療までのあらゆる分野をカバーしています。
服部 工業でおなじみの国際基準が食品でも、ということですね。
坂井 1990 年代前半にISO 品質マネジメントシステム(QMS)が入ってきたときは「なんで日本がそんなものをやらなければならないのか」という声が多くありました。私もそう思っていましたが、ISO の審査員コースを受講してみて、国際規格に基づく活動の素晴らしさに気付きました。概念がはっきりしていて合理的でした。しかし当時の日本人一般の思考回路には、違和感がありました。ただ、それは世界には通用しない態度でした。特に、輸出産業界にとっては引き合いの段階でふるいに掛けられる取引条件になっていました。