「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」、有名な孫子の兵法の一つである。現代において経営者はコンペティターの動向を把握し、営業マンは営業先の現状把握が必須。時代は変われど、「相手を知る」という本質は変わらない。一昨年から引き続き週刊HOTERES は、人脈マッチングスペシャリスト、TOPCONNECT ㈱代表取締役 内田雅章氏をファシリテーターに、強い組織や成長著しい地域や企業の秘訣を探るべく、魅力溢れるリーダーとの対談を実現。第28 回は、不動産売買仲介において業界一の実績を持つ㈱ハウスドゥ代表取締役社長CEO 安藤正弘氏に登場いただきお話を伺った。
何よりもお客さまの声を大切に
業界一の実績を誇る㈱ハウスドゥ
内田 始めに㈱ハウスドゥの事業と沿革についてお聞かせください。
安藤 1991 年、私が26 歳のとき、京都・向日市で不動産仲介会社を創業したことがビジネスの始まりです。その後中古住宅再生販売事業、不動産売買事業を行ない、2006 年よりFC 事業を開始しました。加盟店舗数を伸ばしつつ事業の拡大を図り、15 年マザーズへ上場、16 年12 月には、東証一部への市場変更を行ないました。グループとしては、不動産金融事業を専門とする法人もあります。元ヤクルトスワローズの古田さんをイメージキャラクターとして起用しており、消費者のみなさまにはそちらの印象が強いのではないかと思います。
内田 20 代と若いころの創業ですが、何かきっかけなどあったのですか。
安藤 もともと不動産関係の会社で働いていたのですが、当時はバブル崩壊の影響を受け不動産会社が立て続けに倒産していた時代でした。私の勤めていた企業もあえなく倒産を迎え、その後再就職を試みましたが、どこも新人を雇うような余裕はありません。他の道を探すことも考えましたが、もっと不動産について知識と経験を積みたいという想いが強く、自分で会社を立ち上げることを決意しました。最初は3 坪の小さな事務所でしたが、周囲の企業の倒産が相次ぐことで金利が下がり、一般のお客さまからすれば不動産を購入しやすい状況になっていたので、お客さまは2 年目以降少しずつ増えていきました。
内田 周囲の企業が倒産していく中で、なぜ安藤社長の会社は成長し、生き残ることができたのですか。安藤 お客さまから得た話を通じて、不動産業者はあまりお客さまのことを考えていない企業が多いように感じました。営業担当が見せたい物件しか見せないことや、資金力でお客さまを選んだりすることが、さも当然のような風潮だったのです。一言で言うと「いかに効率よく販売するか」、この一点に重きが置かれている業界でした。
私の会社では決してそのようなことはせず、どんなお客さまでも持っている情報はすべて公開し、10 件でも20 件でも物件の見学に付き合い、納得いただけるまで時間を費やしました。その姿勢が信頼につながり、口コミから新規顧客の獲得へとつながっていきました。このときの成功体験をもとに、私は全国への展開を進めていったのです。
内田 まさに顧客目線に立った発想ですね。
安藤 あと不動産業では他社の商品(物件)をあつかうことにもなりますので、自社の商品だけを積極的に販売しないよう、社員に伝えています。自社の商品においてはSPA(製造小売業)の考えに基づき、お客さまのニーズを取り入れ開発を行なっていますので自信があります。しかし自社中心の考えは視野をせばめ、結果的にお客さまの信頼を損なってしまうので、それだけは徹底しなければならないのです。