「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」、有名な孫子の兵法の一つである。現代において経営者はコンペティターの動向を把握し、営業マンは営業先の現状把握が必須。時代は変われど、「相手を知る」という本質は変わらない。一昨年から引き続き週刊HOTERES は、人脈マッチングスペシャリスト、TOPCONNECT ㈱代表取締役 内田雅章氏をファシリテーターに、強い組織や成長著しい地域や企業の秘訣を探るべく、魅力溢れるリーダーとの対談を実現。第25 回は、震災からの復興を目指す東北・福島において、新たな電力会社の設立によって地元の活性化を目指す若き経営者、福島電力㈱代表取締役社長 眞船秀幸氏に登場いただきお話を伺った。
福島電力㈱の立ち上げ
きっかけは二つの変化
内田 眞船さんは新設する福島電力㈱代表であるとともに、㈱福眞の代表でもありますが、まずは歴史の長い㈱福眞について伺えますか。
眞船 ㈱福眞は、2007 年、私が24歳のときに立ち上げた会社になります。送電業と呼ばれる業態で、生活に欠かすことのできないライフラインの一つである電気が、安心・安全のもとに利用可能な状態を維持し続けるための送電線の建設および保守にかかわる工事などを行なってきました。その技術や施工品質も認められたもので、ISO9001 認証を取得しています。設立当初は従業員数名の小さな状態から始まり、一つ一つの仕事を大切にしながらいろんなご縁や周囲の助けをいただき、現在は東北電力㈱の地元元請け工事会社として登録されています。
内田 なぜ今回福島電力㈱の立ち上げにいたったのでしょうか。
眞船 新会社の設立にいたるきっかけには、二つの出来事がありました。一つは2011 年に起きた東日本大震災です。世界観測史上最大である16~ 25 兆円と言われる被害規模、全壊半壊合わせ40 万棟にも及ぶ家屋の倒壊、復旧活動を見続ける中で、自分たちも地元の企業としてもっと貢献できる部分があるのではないかと常々考えていました。
そしてもう一つは、16 年4 月からの電力の小売全面自由化です。地元の活性化と同時に、震災で皆さまからいただいた義援金やボランティアの方々に対する恩返しもしたいという思いがありました。そこで福島に拠点を置く企業が電力を全国の人に従来よりも低い価格で提案し、支出を削減することができれば、個人・法人を問わずそこに意義が生まれるのではないかと考えたのです。
内田 復興支援の部分で、実際にはどのような貢献を考えられているのでしょうか。
眞船 最近は、ニュースで福島の名前を聞くこともすっかりなくなりました。震災から6 年という時間の経過、一部地域の帰村宣言を受け「被災地では復興に向けた活動が行なわれている」という印象をお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんが、現実はそうでない部分もあります。大きながれきや廃材などはたしかに撤去されましたが、残る汚染廃棄物の問題や汚染された田畑など土壌の問題、なお続く帰還困難区域の存在など、解決すべき問題は山積しています。汚染の問題などは専門的であり、長期的に時間を要することですが、例えば撤去が完全に完了していない小さな区域や地域の活性化につながるイベントの企画などは、私たちが発信することで関心を持ってくれる方もきっといらっしゃると思います。小さなことかもしれませんが、行政の手が届きづらい部分を、地元の企業として補っていきたいと考えています。