グラスの消毒済みビニール必要ですか
今の時代には今の時代に見合った「おもてなしと業務」がある。例えば昔客室のグラスをビニールで覆っていると、清潔を売りにしているホテルと思えたが今はむしろ煩わしい。なぜならばせっかく洗浄機で綺麗に洗ったものに1 工程を加えるということは、多かれ少なかれ誰かが素手でグラスに触っていることで、むしろ最近は嫌がる人がいると聞く。中にはトイレットぺーパーでさえ先端が折られていると、一度人の手を経ているのが嫌だと、ある有名スターはわざわざその部分を切り取って流すという。つまり、今の時代は昔と違い清潔さに敏感で、あえて手を加えることを嫌がる人もいるのである。特にグラスにビニールカバーがついていると私も一度自分で洗ってから使う。そしてもう一つ不要と思えるのがトイレの上蓋の消毒済みという紙である。トイレはもともと不潔と思われている場所なので、お客さまが帰られるたびに除菌するのは当たり前。リーダーの皆さん本当にこの二つ必要ですか。
おもてなしの差別化
常に勝ち組でいるためには他社との差別化を日ごろどれだけやれているかである。先日地元テレビ局が、新たに盛岡にできたお店の特集の中で、1 軒だけ行ってみたいという気持ちに駆られ早速そのカフェに足を運ぶと、他店で当たり前にかけられるいらっしゃいませでもなければ、こんにちはでもなく意表をつく「お帰りなさい」という言葉で出迎えられた。そこで私は今日初めてこのお店に来たのにどうしてお帰りなさいなのか尋ねると、「私たちはすべてのお客さまに、わが家に戻ってこられたときのようにくつろいでいただきたいから」という。なるほどこれぞホスピタリティーの理にかなった考え方である。そして出てきたお皿のふちにも「おかえりなさい」と書かれている徹底ぶりに感動を覚える。さらにビックリしたのは帰るときスタッフが玄関の外に飛び出して手を振って見送ってくれる。まさにこの二つも差別化であり、ホテルだからと殻にこもらず真似てみる価値があるのでは。
第 97 回
おもてなしの達人 鈴木 忠美 次世代リーダーたちに贈るメンタルケア術 これからの人材育成
第 97 回「時代で変化するもの」
【月刊HOTERES 2016年07月号】
2016年07月01日(金)