濱田倫子が大好きなスポットがある。それが二十間坂(にじゅっけんざか)から見る西別院本願寺の屋根の上に見える教会の十字架という。二十間坂は字のとおり二十間、約36mある道で、昔何度も襲った大火を備えたもの。夜はライトアップされ観光客でにぎわう観光スポットである。その中でも見落としてしまいがちな寺院の屋根と十字架の重なりが、ペリー開港以来、西洋、和洋にこだわることなく受け入れた、いや、受け入れざるを得なかった函館の歴史を物語っているという。
実際、函館には和と洋の文化を融合させた和洋折衷の建築物が点在している。1 階が和のデザイン、2 階部分は洋のデザインが施された外観を持つ。独特な建築様式を愛する人も多く、最近は空き家となった古民家を購入する人も増えてきたという。実は濱田倫子が提案した古民家マップも和洋折衷の建築様式に魅せられ、都会から移住した人との出会いにより実現した。
「その方は本当に細部にわたる古民家情報をお持ちでした。おどろきました」と函館を愛する人と出会えた喜びとともに、ますます函館の奥深さにひかれていく濱田倫子だった。
ちなみに古民家そのものは一軒20 ~ 30 万円で購入できるものの、寒冷地で人が住めるようにするためには冷暖房設備の新設や老朽化した配水管の工事など、リフォームに1千万円弱を必要とするという。
異国情緒にあふれる函館の街では住民ももちろんのこと、野良猫たちものんびり優雅に暮らしている。濱田倫子はどのあたりでネコたちが生活しているのか、産まれたての子猫がどこにいるのかなど、細かなネコ情報を自分の足で稼いで持っている。
そんな函館大好き人間、濱田倫子。飯野智子はその情報量を生かしてFecebook 更新担当に濱野倫子を抜てきした。散策のときはいつもカメラを片手に抱え、撮影した写真をホテルショコラのFacebook にアップしシェアをする。日々更新される函館の街角情報にファンの数も増え、「いいね!」の数も500 件を数えるようになった。1 回だけ、“ あのときはゆっくりお礼の言葉がいえなかったですが、のんびりできました” と宿泊者からのコメントが寄せられたという。
「おいしいカレー屋さんもあるんですよ。函館はとても魅力的なところです。ぜひ、3 連泊ほどしてゆったり、ゆっくり散策していただきたいです。函館のことならなんでもお聞きください。いろいろな情報を提供します」と語る濱田倫子の目はキラキラかがやいていた。
飯野智子(いいの・ともこ)
有限会社Faith Up代表取締役、ホテルショコラ函館総支配人、恵泉女学園大学、はこだて未来大学非常勤講師。株式会社ホテルオークラ東京に在職中、上海勤務、セールスマネージャー等を経て、客室予約課長として宿泊販売管理やお客さまへの接遇を担当する。2005年3月有限会社Faith Upを設立し代表取締役に就任。現在では、ホテルショコラ函館の運営を受託し、総支配人として現場に立つ一方、自治体、各種企業向けに日々の経験を生かしたホスピタリティやコミュニケーションを題材とする研修や講演を行い年間60回以上登壇している。