これまで7 回にわたって、旅館の経営者を中心としてインタビューを行ってきた。それによって、変革を意識し続ける経営者たちの苦闘が少しずつ明らかになってきたかと思うが、旅館の変革には、旅館そのものだけでなくそれを取り巻くさまざまな関係者も変革していかなくては成しえない。
そこで、今回は、フランスのパリに本部を置くコンソーシアム、Relais &Châteaux に焦点を当ててみた。本部がパリで、個性的なホテルやレストランが加盟していると聞くと、西洋の薫り高いイメージが強いが、本連載でも何軒かご紹介したとおり、日本の旅館もいくつか加盟している。今では、世界の62 カ国で、540 のホテルとレストランが加盟するにいたったこの組織が、なぜ日本旅館を世界に紹介しているのか。その理由を探った。
徳江 ルレ(Relais & Châteaux を以下ではこう略す)は、つい先日も世界大会を開催したのですよね? どのようなイベントだったのでしょうか。
神谷 今年はマルタ共和国で開催しました。ルレのメンバー450 名が一同に会したのです。ルレは協会組織なので、年次総会を開催する必要があり、それが、イベントのようになっている面もあります。
徳江 なるほど、年に1 回、メンバーが顔を合わせるというのは興味深いですね。
神谷 この総会のことを“Rendez-Vous+地名”で呼んでいるのですが、来た44る2016 年は“Rendez-Vous Tokyo”、つまり東京で開催することになりました。これはアジアパシフィック地区初の開催です。
徳江 それは素晴らしい。とても光栄なことであるとともに、オーナーたちが皆、日本の良さを直接感じていただけるいい機会ですね。
神谷 世界中のメンバーたちも、日本を体感できると楽しみにしています。
徳江 それにしても、ルレはメンバー同士、とても仲がいいですよね?
神谷 会員はいずれも、オーナーか総支配人自らがお客様に挨拶し、サービスをする「顔が見える組織」であることが求められます。そうでなければ、その土地の魅力をお客様に伝えるのがなかなか難しいからなのです。
徳江 最近の観光学では、「着地型観光」という話に焦点が当てられたりしていますが、それを先取りしていたような感じですね。そうなると、おのずから規模は小さくなりますね。
神谷 実際、メンバーの施設1 軒あたり平均客室数は28 室です。あと、オーナーたち皆が、それぞれの土地を愛しているという共通項があると、オーナー同士、お互いに距離も縮まりやすいのかもしれません。「ファミリー・スピリット」が信条ですから。