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今の時代に求められる職場づくりを進める

伊豆北川温泉 望水 ~ どこで働くかより、誰と働くか

2025年01月10日(金)
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新年 スタッフ大集合
新年 スタッフ大集合


静岡県賀茂郡東伊豆町北川温泉の日本旅館「望水」は2024年夏、お客さまの滞在スタイルの選択肢を増やすととともに、働き方の改革をふまえ、3Fにムーンロードダイニング「ときの舟」、個室ダイニング「千年庵」を創造した。特にムーンロードダイニング「ときの舟」で、カウンター越しにお料理を提供するのは、調理師を中心としたチーム。従来の旅館における調理師は裏方のイメージが強くある中、石井調理長は人が成長するにはどのようにしたらよいか常にアンテナを立て、調理師にも表舞台となるステージを作りたかったのだ。そのような環境を通しながら、技術の向上は基より、人として自己成長を感じることのできる時間を過ごしてもらいとたいという強い想いもあった。また、望水では「成長支援プログラム」というものがあり、全員がまずは想い出つくりクリエーターとしてスタートし、関わる人達との想い出つくりのお手伝いに努めている。そして、経験や知識を他の人と共有し、支え合い、高め合う「利他の世界観」をベースに自身の成長と向き合いながら、「人を育てることができる人」を高く評価する組織文化を醸成している。この哲学や、調理長の想いを反映し創造したのが、ムーンロードダイニング「ときの舟」である。執行役員社長室長の林紀幸氏と調理長の石井洋次氏に、望水の信念である「旅館づくりは人づくり」の真髄についてインタビューした。
 



 


個室ダイニングで食事の選択肢を増やし
お客さまニーズと人材不足の深刻化に対応

 
——「望水」の食事処をリニューアルした経緯を教えてください

 
 コロナ禍中だった2020年に、2階に7室ある「ムーンロードルーム」のお客さま限定でご利用いただける個室ダイニング「日日庵(にちにちあん)」をオープンしました。従来は部屋食のみで食事を提供してきたのですが、部屋食を求めているお客さまだけではなくなった時代の変化に合わせて、選択肢を広げる必要があると私たちはかねてから考えていました。お客さまのニーズに応えるのはもちろん、人材不足の深刻化を考えると人手がかかる部屋食だけでオペレーションを成り立たせるのは難しい状況になっていくという危機感もその背景にはありました。個室ダイニングによって食事スタイルの選択肢を増やしたことで、お客さまは従来以上に喜んでくださっています。一方で日本旅館を運営する私たちは、日本の伝統文化である部屋食をこれからも守っていかなければならないと考えています。
 
石井 料理の見せ方も変えました。より、お客さまに楽しんでいただく工夫と、外国人のお客さまニーズにも応えるために、寿司、天ぷら、すき焼きをメニューに取り込むようにしています。また食の好みやアレルギーの有無については、可能な限り予約の時点で伺うようにしています。リピーターのお客さまに限り、朝食については和食だけでなく、洋食を選択できるようにしています。多くのお客さまは私たちの料理の味を気に入ってリピートしてくださるので、とても嬉しく感じております。
 
短期間で多様な仕事ができる環境を整えて
若い人たちの働き方の志向にマッチさせる

 
——望水では人材採用において、どのようなアプローチをしていますか。
 
 採用活動にあたっては、「どのような環境で働きたいか」を聞くようにしています。さらに新卒採用したスタッフに対しては、「どうして望水を就職先に決めたのか」について会話するようにしています。2020年から調理人の採用も始めたのですが、若い世代の調理人が持っているキャリアに関する考え方に合わせて、石井調理長は短期間で役割を変えていくやり方で人材を育てています。
 
石井 昔の職人の世界では、1つの場所で長い年月をかけて同じ仕事をする修行のような働き方が求められましたが、今の時代にそのやり方を貫けば人材の定着は図れません。そこで私たちは約半年のサイクルで焼き場、煮方、刺し場をまわってもらいながら、さまざまな技術を身に付けてもらうように心掛けています。
 
 終身雇用の時代ではなくなった今の状況において、若い人たちは多様な仕事を経験できる環境を職場に求めていると感じています。もちろん望水で長く働いてほしいのはやまやまですが、10年も20年も1カ所で働き続ける志向を若い人たちが持っていないのであれば、短期間でさまざまな仕事ができる環境を整えることが、若い人たちのニーズとのマッチングを考えると大切なポイントになると考えているのです。
 
——労働環境について、どのように考えていますか。
 
 望水の代表者は「旅館づくりは人づくり」という、強い信念を持っています。働いている人たちの笑顔や幸せがなければ、旅館の繁栄はないということで、2024年は年間60日の休館日を設けました。休むことのできる日が明確な環境を、働く人たちの笑顔と幸せにつなげていく取り組みです。2025年には毎週火曜日と水曜日に定休日を設けて、年間93日の休館日を予定しています。しっかりとお客さまを受け入れながら、休むときにはしっかりと休むというメリハリのある働き方は、今後ますます求められると考えて決断しました。
 
「素直」で「誰かに喜んでもらいたい」と
考える人たちに仲間になってもらいたい

 
——望水の仲間になってほしい人材について、どのような人物像をイメージしますか。
 
 望水が求めるのは、いわゆる“仕事ができる”という感じの人物ではないのかもしれません。どちらかと言うと「素直」で「誰かに喜んでもらいたい」と思っている人物が、望水には合っているのだと思うからです。お客さまに喜んでいただきたい気持ちを抱いているのはもちろんのこと、一緒に働く仲間にも喜んでもらいたいと願っている人を採用したいという基準を、私たちは持っていると思います。たとえば感性のように、人が生まれ持つ部分は教えてどうにかなるものではないのかもしれません。ですからその人がもともと持っているものは何なのかを、面接ではできるだけ見極めるようにはしています。
 
石井 人それぞれ足りない部分はありますから、人材教育によって少しでも成長してもらえるような取り組みも続けていきたいと考えています。


伊豆 北川温泉 望水

■ 2024年オープン施設

<ムーンロードダイニング「ときの舟」>

<個室ダイニング「千年庵」>

採用サイト
 
(取材)編集部 林田

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