当コーナーでは日本が抱える最大の社会問題である「少子高齢化」の進展と、それにともなって①健康関連ビジネス市場が今後大きく拡大するであろうこと、②その市場に参入するチャンスは従来の健康関連産業のプレーヤーだけでなく、ホテルなど他分野のプレーヤーにもあることを訴えてきた。さて、第8 回は少し趣向を変えて、少子高齢社会と、ここ数年政府が血眼で進めている「和文化見直し」のプロモーションをつなぐ線について考察する。
少子高齢社会の進展で衰弱する国力
今、日本が抱えている最大の社会問題の一つが「少子高齢社会の進展」である。
少子高齢社会が進むと①国内マーケットが縮小し、経済規模も縮小する(特に極端な国内マーケット依存型産業、例えば外食産業などに与える影響は甚大となる)、②多くの高齢者の社会保障給付(年金や医療費、介護費など)を、少ない若い世代が支えるという不安定な状況が強まる-などの理由から国力は衰弱していく。
これと関連して理解しておくべき点は、今現在日本経済を牽引している自動車会社など基幹産業の多くはもはや日本企業というよりも、グローバル企業になっているという点である。彼らの海外現地法人がいくら利益を上げようとも、税金としてそれが日本に還元される割合は決して高くはない。国内産業の空洞化はこのようにして進んでいるのである。
さて、こうしたネガティブな考え方への反論として「戦後の日本経済は内需に依存せず、外需依存(=輸出)で成長してきた。もっと自国の底力に自信を持つべきだ。勤勉な国民性と、手先の器用さが生み出す「匠の技」を駆使すれば、再び日本製品が世界を席巻する時代が来る」との趣旨の見解を昨今よく見聞きするようになった。しかし、歴史を紐解いてみると、日本の「匠」について外国人がリスペクトを寄せるのは主に絵画や建築物など文化的分野に対してであり、産業製品に対するものではない。