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【レポート】「TOASTING LIFE TOGETHER」を体現するイベント:「CAMPARI JAPAN Cocktail Festa 2024 – Pioneer the New Age -」開催

2024年03月19日(火)
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CT Spirits Japan株式会社は、3月14日(木)に東京・WITH HARAJUKU HALLにて、自社が取扱うブランドの世界観と、そのブランドを使った様々なカクテルを体感できるイベント「CAMPARI JAPAN Cocktail Festa 2024 – Pioneer the New Age -」を開催した。
 

【前年よりも勢いを感じるイベント】
CT Spirits Japan 株式会社は、世界的なスピリッツ企業であるCAMPARI GROUPが持つブランドの日本市場での展開と成長のために2020年に合弁会社として設立された。2024年4月1日より日本市場での更なる発展と事業拡大を目指し、グループ100%子会社としてCAMPARI JAPAN株式会社に社名を改める。
 
前年も同じ会場で「CTSJ Brand &Cocktail Festa 2023」が開催され、その様子をレポートしたが、今回はタイトルにある「Pioneer the New Age」が随所に感じられるところが前年と異なっている。
 
この「Pioneer the New Age」は、2023年同社が開催した「CAMPARI GROUPカクテルグランプリ2023」の一次審査カクテルテーマでもあり、次世代のカクテルシーン(文化)を開拓し、その象徴となりえる独創性豊かな才能を発掘する目的もあった。
 
今回の「CAMPARI JAPAN Cocktail Festa 2024 – Pioneer the New Age -」はそれを踏まえての開催となっており、各ブースでは、業界を代表する著名なバーテンダーが腕を振るい会場は多くの来場者で賑わっていた。
 

AGAVEコーナーで来場者にカクテルを提供する江刺氏と朝倉氏
AGAVEコーナーで来場者にカクテルを提供する江刺氏と朝倉氏
WHITE SPIRITSコーナーで来場者にカクテルを提供する後藤氏
WHITE SPIRITSコーナーで来場者にカクテルを提供する後藤氏
檀上にて優勝カクテルを披露する伊藤氏
檀上にて優勝カクテルを披露する伊藤氏
APEROLコーナーで来場者にカクテルを提供する山本氏
APEROLコーナーで来場者にカクテルを提供する山本氏
CAMPARIコーナーで来場者にカクテルを提供する眞野氏と石岡氏
CAMPARIコーナーで来場者にカクテルを提供する眞野氏と石岡氏
LIQUEURSコーナーで来場者にカクテルを提供する鹿山氏
LIQUEURSコーナーで来場者にカクテルを提供する鹿山氏


この勢いはどこからくるのだろうか。それを読み解くポイントは2つあると考えている。1つはCT SPIRITS JAPANブランドアンバサダーの小川尚人氏を中心とした関係基盤、もう1つは商品そのものではなく創造的な工程を加えて提供をするという点だ。以下、順に説明をしていきたい。
 
【社会関係資本の蓄積場所】
社会関係資本やソーシャル・キャピタルという言葉が使われるようになってから久しい。特にビジネスの分野においてイノベーションが求められる今日、共創という意味でもその重要度は増してきている。
 
社会関係資本には資本という言葉が用いられているが、その資本はどこに蓄積されるのであろうか。この疑問を三隅は関係基盤という概念を用いて説明をする(三隅, 2013)。社会関係資本と言われると実態がつかみにくいが、〇〇会や〇〇グループ、同郷や同窓という具体的なメンバーシップがあると繋がりが明確に浮かんでくる。この繋がりを関係基盤という括りで見ていく。
 
関係基盤の視点でみると、小川氏のバーテンダーとしてのネットワークが重要な意味を持っていることが分かる。「CAMPARI GROUPカクテルグランプリ2023」にて、後閑氏や南雲氏といった日本のバーシーンを牽引する方々を審査員で招いたのに加え、今回のイベントで業界を代表する著名なバーテンダーが腕を振るったのにも、小川氏の存在は大きく影響しているだろう。
 

関係の流動性という視点も重要だ。前回のイベントで、イタリア文化のトークセッションを務めたのは江刺幸治氏(SPIRITS BAR Sunface SHINJUKU)だったが、今回は「CAMPARI GROUPカクテルグランプリ2023」優勝の伊藤博之氏(BAR Eight Rabbit)が務めた。
 

大会の優勝者が改めて感じるイタリア文化を発信することで、同じテーマであっても違った視点で伝えることができる。白井智也氏が新たにCT SPIRITS JAPANブランドアンバサダーとして加わっていた点も見逃せない。ネットワークに流動性があることで、新たな出会いや関係形成が進みやすくなる。

【商品そのものの訴求ではない方法】
今回のイベントの2つめのポイントは、ただポートフォリオを並べて試飲するのではなく、バーテンダーがカクテルとして提供をするという創造の工程を経て商品を紹介していた点だ。この点は前回から大きな変更を経ており、かつ成功していた点だと感じた。
 
例えば、ブラウンスピリッツのコーナーでは静谷和典氏(新宿ウイスキーサロン/BAR LIVET)が「ワイルドターキー8年」をベースとしたカクテルを披露していた。ウイスキーを熟知する静谷氏ならではの、ターキーの香り高さや樽の甘さがより洗練された形で感じることができる味わいに思わず感嘆の声を上げた。
 

BROWN SPIRITSコーナーで来場者にカクテルを提供する静谷氏
BROWN SPIRITSコーナーで来場者にカクテルを提供する静谷氏
静谷氏考案のカクテルレシピ
静谷氏考案のカクテルレシピ

来場者にとっては、既に取り扱いをしている商品もあるだろう。それを新しい表現として「魅せる」方法を学べるという点において、今回のイベントには大きな価値がある。「Pioneer the New Age」という根底にあるテーマを踏まえつつ、来場者の感性に訴えかけることで、商品の魅力や新しい活用方法に光を当てることができる。もちろん商品そのものを味わうこともでき、来場者の中には、カクテルと両方味わいながら勉強をする姿も見られた。
 
酒類業界はオントレード向けのマーケティングにおいて手数が少なくなってきているように思う。その結果として、奇抜な新商品や細分化による訴求といった、いかにして価値を伝えるかという設計が商品自体に大きく反映されたものが近年多くなってきているのではないだろうか。ロベルト・ベルガンティ氏が言うように、意味側を変えることで商品そのものに新しい価値が生まれることもある。今回のイベントでの提供方法は、閉塞感のある酒類業界の販売訴求方法として実にお手本のような商品の魅せ方であった。
 
【場のマネジメント】
今回の「CAMPARI JAPAN Cocktail Festa 2024 – Pioneer the New Age -」は、イベントという場を用意することで関係基盤と創造性を1つの形でまとめ上げたとも見てとれる。昨今、バーテンダー同士の交流イベントは様々なところで開催されているが、招致する方を変えただけのものも多くある。イベントを通じて何を成していきたいのかというデザインが感じられないことも多い。
 

開場後大勢の来場者で一杯の会場
開場後大勢の来場者で一杯の会場

その点今回のイベントは、前回と比較しても、「CAMPARI GROUPカクテルグランプリ2023」の流れを汲みつつ「Pioneer the New Age」という一つの新しいカクテルシーン(文化)を開拓していきたいという明確なデザインが感じられた。何より、カンパリグループが持つ「TOASTING LIFE TOGETHER」が体現されている場であった。
 

開場後1時間程しか会場にいられなかったが、短い時間であっても前回よりも進化し、来場者の楽しみも増えていることを肌で感じた。欲を言えば、双方向の創作の機会があれば、よりよい場になったのではないかと思う。前回は「カクテルラボ」が併設されてカクテルを試せるような設計がなされていた。今回、業界を代表する著名なバーテンダーから刺激をもらい、その場で試して、フィードバックを互いにし合えるようなUXデザインがあれば、よりpioneeringな雰囲気が場に生まれたのではないだろうか。
 
【見えないものを見る力】
以前、小川氏と話しをする機会に恵まれた際に「Pioneer the New Age」は続けて欲しいと伝えたことがある。先に触れた通り、筆者は酒類業界の販売方法にはある種の閉塞感が漂っていように感じており、「Pioneer the New Age」にはその閉塞感を打開する可能性があると思っている。
 
変化が激しく、卓越した成果がより求められる時代には、社会関係資本だけでなく個性や感性も重要になってくる。ダニエル・ピンクが『ハイ・コンセプト』で示した6つの感性がその良い例だ。小川氏はアーティストになりたいとインタヴューで語ってくれたが、カンパリとアートは密接な関係がある。バーテンダーがその職業を一歩先のアーティストとして進めていくためにも、「Pioneer the New Age」は意義のあるコンセプトだと感じている。
 

次の大会も控えている
次の大会も控えている

来たる時代を鑑みると、商品そのものへの理解だけでなく、より大局的な視点や言葉にならないものごとを見ることも必要になってくる。そうした意味も込めて、商品そのものではない良さや課題(機会)を企業と読者(プロフェッショナル)に伝えられればと思い今まで筆を執ってきた。
 

CT Spirits Japanには様々な機会を頂いた。この場をお借りしてお礼申し上げたい。新生CAMPARI JAPANの発展と、日本のバーシーンがよりよいものになることを願って擱筆としたい。
 
 
【参考文献】
三隅一人(2013)『社会関係資 理論統合の挑戦』ミネルヴァ書房
伊丹敬之(2005)『場の理論とマネジメント』東洋経済新報社
石川淳志, 佐藤健二, 山田一成/編(1998)『見えないものを見る力 社会調査という認識』八千代出版
ダニエル・ピンク(2006)『ハイ・コンセプト「新しいこと」を考え出す人の時代』三笠書房

担当:小川

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