現実と課題の差が大きいほど人は考える
 
上田　そうならないためにも成長させていく課題を与えることです。仕事は時間の経過で誰でも必ずできるようになります。大切なのは考え方を教え、習慣化させることです。現実と課題とのギャップがあり、自分がやらなければならないことと理解をすれば、どのようにしたら課題をクリアできるのかを自分で考えるようになります。そのためにも小さなことでもほめること、ほめることで自分の存在価値を見出せる場所はここにあるという思いにさせることです。ホテルには、さまざまな職種があります。その気になればいろいろな経験をすることができます。これはほかの業種にはないホテルならではの財産です。このステージを大いに生かして自分が生きていくための居場所を見出していくことができるのです。
 
福永　労働環境が厳しいという情報だけが、さまざまな形で発信されるため、ホテルで働きたいという次世代は減少しています。それを食い止めるためにもホテルの素晴らしさをもっとアピールする必要がありますね。もちろん、ウエディングプランナーもしかりです。どうしても業務的な面ばかりが表面化してしまいますが、生涯に一度の最高のときにかかわり、そして“ありがとうございました”の感謝の言葉をいただける本当に素晴らしい仕事であること。高額なお金をいただきながら感謝をされ、さまざまな方の生き方や考え方を知ることで自分自身も成長できる、こんな仕事はほかにはないと言ってもいいくらいです。
 
夢を語ることは部下との
価値観のすり合わせ
 
上田　上司は部下に自分の“夢”“ビジョン”を語らなければなりません。“ビジョン”を語り続けることは部下との価値観のすり合わせをすることにつながります。そうすることで、上司のビジョンに向かって、また自分の夢に向かって力を試してみたいという前向きなマインドに変わっていきます。夢を持っている上司を見ていれば自然と明るい未来や希望が見えてくるでしょう。私自身五つのホテルの新規開業に携わりました。新規から携わることはホテルへの想おもいも強くなります。当社ではこれから毎年1件以上の新規物件の開業が予定されています。夢を描くステージには最適だと考えます。また、昨年買収した「ザ・カハラ・ホテル＆リゾート」を筆頭に海外への展開も視野にあり、さらに広がる夢があると思います。
 
福永　私もウエディングプランナーとして駆け出しのころ、とてもステキであこがれていた先輩がいました。あんなふうになりたい！ という思いで必死に取り組んできました。上司の存在は重要ですね。上司が夢と希望にあふれて、仕事もスマートにこなしていれば“管理職って楽しいんだ”ときっと思うことでしょう。
 
上田　まずはこの人と一緒に働きたい！ と思ってもらえる上司になれるかが大切です。一緒に働くことで自分ももっと成長できると思うはずです。最初は現実とかなりかけ離れた夢やビジョンかもしれませんが、そこに向かって考えて行動し、トライ＆エラーを繰り返し、さらに成長していけます。
 
福永　夢、希望を与えるために上司が夢を語り、上司から声を掛けてコミュ二ケーションを図ること、そして上司は社会の基準になるという自覚を持つということ、管理職として大切なことをお伺いできました。ありがとうございました。

東京ベイコート倶楽部　ホテル＆スパリゾート
総支配人
上田健司 氏
1984 年日本ヒルトン㈱に入社。ヒルトン東京にてベルマンを経て、ヒルトン大阪へ。ヒルトン大阪では、フロントシニアレセプション・アシスタントリザーベションマネージャー・ベルキャプテンを経験する。1991 年（現）㈱HNA 神戸に入社。神戸ベイシェラトンホテル＆タワーズにて、宿泊支配人、宿泊部長、宴会部長を務め、2006 年リゾートトラスト㈱に入社。東京ベイコート倶楽部、宿泊部長を経て、10 年よりエクシブ有馬離宮開業に総支配人として携わり、翌年同ホテルを開業させる。13 年よりベイコート事業部長兼東京ベイコート倶楽部総支配人として現在に至る。

㈱フェイス
代表取締役
福永有利子 氏
レストラン・ゲストハウスのウエディングプランナーから各現場の管理職としてマネジメントを担い、確実に業績を伸ばしてきた。2003 年にウエディングプランナー養成スクール講師をはじめ、06 年より大学にて非常勤講師として教壇に立ち、現在も教鞭を執っている。06 年堂島ホテル婚礼部長に就任、その後08 年同ホテル副総支配人に昇任。09 年には㈱フェイスを設立し、代表取締役に就任。現在は、ホテル・ゲストハウスを主に成約率向上を目的としたトレーニングや集客戦略立案・実践支援などのコンサルティングに加え、ウエディング全般にわたる支援を行なっている。著書・ウエディングプランナーじゃない、アカンのは上司や！ 悩める管理職のアメムチ19 の育成術