ほめるときに範囲の枠組みを広げる
福永 現状を打破し、顧客満足度や従業員満足度を高めるためには、どのようにしたら良いと思われますか。
上田 できたことに対してほめるときに、その枠を広げていくことです。強制的に仕事を与えるのではなく、“ここまでできたらさらにいいね”と言えば、“あっ、そこまでやっていいんだ”という認識と、ほめられたことイコール自分が認められたという認識を持ちます。自分の価値観が肯定されれば自然と自信もつき、働くことへの満足度が高まり、次へのチャレンジにつながります。今、会社では誰でも判断ができる基準作りを行なっており、各自の行動判断を単純明快で誰でも分かるようにしています。
福永 そのためには管理職は常にスタッフの行動や言動に耳を傾け、目を向けていかなければなりませんね。最近はコミュ二ケーションを取ることが不得手な若者が多いのでなおさらです。
上田 “困ったことがあったら何でも言ってきなさい!”と手を差し伸べても、なかなか上司や管理職には言いにくいものです。前職のホテルでもしかりでしたが、上司から部下に声を掛けてコミュ二ケーションをとっていました。特に新入社員は配属された職場が社会の基準となります。まさに上司が社会の基準です。自身の行動や言動が社会の基準として刷り込まれていくことを自覚しなければなりません。部下が成長しないのは部下の能力や社会の問題だけではありません。幹部クラスの責任とも考えるべきです。次世代のホテルを担う大切な人“財”であり、会社から大切な人材を預かっているのですから責任は重大です。
福永 ホテル業界では、退職者増加にともなう人員不足から、現場における一人当たりの仕事量が年々増えています。多忙な中で部下の面倒まで見ていられないというのが現実です。ウエディング業界でも状況は同様で、仕事量ばかりが増え、自ら何とかして覚えようという高い意識を持つスタッフも少なくなってきたため、そのうちにあこがれの職業だったはずのウエディングプランナーの仕事への熱意も薄れ、“ウエディングプランナーの仕事ってこんなものなのかな…”と思い始めます。そうなると接客に気持ちが入らず、お客さまの心にも響かないため、なかなか個人実績を上げることができなくなり、早々に退職してしまうという悪循環を引き起こしてしまいます。
第11回
Wプロフェッショナルズ「求められる人材を探る」
東京ベイコート倶楽部 ホテル&スパリゾート 総支配人 上田健司 氏 × 福永有利子 氏
【月刊HOTERES 2015年11月号】
2015年11月27日(金)