「円環的思考」に基づいた組織づくりこそがワンチームオペレーションを生み出す
生沼 初めてお会いする甲斐社長との会話の最初がいきなりの話になりますが、私は約 30年間実戦空手を習っておりまして、その空手の先生から「円で受けて、円で攻めなさい」という教えを以前授けられました。最近ようやく言葉の真意についてわかりかけた感覚を持ち、その教えは【メズム東京、オートグラフ コレクション(以下メズム東京)】の組織においても活かせるのではないかと考え始めました。
私たちは部署ごとの仕事を縦割りで行うのではなく、「スターサービス」という名称のワンチームでお客さまに寄り添うスタイルでサービスにあたっています。私は「円環的思考」と言っているのですが、お客様を中心点としてスターサービスはまさに円を描くようにオペレーションが動いているのです。
欧米の武術は直線的な動きが主体ですが、日本の武術は自分よりも大きく力が強い相手から身を守るために、直線的な動きよりも柔軟に且つ力を有効に使える円の動きによって体系が作られています。そして円環的思考に基づいた組織づくりこそが、私が描くメズム東京の動き方を形づくるのだということにつながったのです。この考え方というのは ITという業態でも、組織形成という点では共通するのではと思うのですが、いかがですか。
甲斐 そうですね、理解できることが多いと感じます。私が起業してから時代は流れ、バブル崩壊、リーマンショック、東日本大震災などさまざまな出来事を契機に社会や組織のあり方は変わっていきました。
変化が続く中で、従来のヒエラルキー的な組織の形から、次第にフラットな輪のような形のオペレーションにした方が物事は上手く進むことが、私自身もわかってきました。役割の違う人たち同士がフラットな関係性に基づいて一緒にオペレーションを進められる組織を創り上げた方が、やる気の向上にもつながるということだと思います。
生沼 そうですよね。そして、その形を作ることができる環境が、日本にはあるのではないかと強く思っています。欧米はどちらかというと組織の統制を取るために直線的な思考をもとに部門を細分化した組織の形が一般的ですが、一方で日本の場合、円環的思考の組織づくりを推進しやすいと考えています。
もう1つ、システム権限に関しても、欧米では一般的にリスク管理の観点からシステム権限を細分化された業務に紐づけることにより利用範囲並びに利用者を限定します。一方、システム運用履歴を確実に記録することができればそれ自体が抑止力になるため、複数業務に関わる従業員が誰でも異なる業務システムに触れることができるようにしても問題はないとも言えます。つまり権限を縛るのではなく、確実に運用履歴を記録できれば組織全体ですべての仕事に取り組んでいくワンチームオペレーションは実現できるということです。

