「ここでしか体験出来ない物語」として日本独自のイマーシブシアターを作るチームdaisydoze(代表 : 竹島唯、近藤香)は、東宝株式会社演劇部制作協力のもと、4日間限定の新作公演『Anima』を2023年12月9日(土)・10日(日)・16日(土)・17日(日)に東京のアートホテル・BnA_WALLで上演をしている。
「宿泊者の夢が現れて浮かぶホテル」を題材に、心理学者のユング、そして物語の舞台である日本橋が「竜宮城の港なり」と評されたいたことに着想を得た作品である『Anima』では、夢へと誘う薬草酒が物語の中で一つの鍵を握る。その薬草酒にカンパリがタイアップをしている。
作品への没入感を高めるカクテルとして、「Dream(夢)」と「Doze(まどろみ)」の2種類が用意されている。「Dream(夢)」はスタンダードなカンパリソーダに自家製レモネードを加え、ハーブ感を活かしながら口当たりを優しくアレンジしたカクテルで、カンパリらしい薬草感が味わえる。「Doze(まどろみ)」は、カンパリをヨーグルトの清澄作用と乳酸感でまろやかに仕上げており、乳酸らしいまろやかさと小気味よい酸味がある白いスプモーニだ。
【世界観に浸る】
daisydozeのイマーシブシアターの特徴は、観客も作品世界の一部として加わることにあると感じた。ただ舞台ではない空間で行われる上演というものではなく、作品世界の中で観客も一種の役割が与えられている。物語が進むにつれて、その物語に身をゆだね、作品の中に溶け込むことで、没入体験が得られるようになっている。観客一人一人の体験も異なるため、自分自身の体験を通じた解釈として、その作品が意味を成してくる。
今回の新作公演『Anima』を体験して、「サプライヤー」「ホテル」「daisydoze」の三者にとても可能性を感じた。「サプライヤー」は自社製品の新しいプロモーションとしての活用の道があり、「ホテル」は泊まる場所ではなく、物語の小部屋として空間的な側面が非常に強調されるためよりホテルを知ってもらうことに活用ができると感じた。「daisydoze」の物語は、空想のものではなく、上演される地の歴史や物語を抽出して構成がされている。これは、地域創生にも活用が可能であろう。
ゲネプロを体験させて頂いたが、来場者のデモグラフィックも酒類企業やホテルがアプローチしきれていない層が多くいたように見受けられた。加えて、作品による世界観とのアフィニティがあり、「体験」の一環として触れられることが大きい。普段の使用目的ではないところでの刺激を得ること、また作品自体への好感度と相俟って、製品やホテルへの認知・連想・態度もより良いものになる可能性があると感じた。
ホテルという宿泊空間を超え、壺中の天へと誘う薬草酒。作品を体験し終えた後に、改めて2種類のカクテルを振り返ってみると、世界観とも非常にマッチしているように感じた。もう一歩踏み込み、作品体験後に、そのカクテルを自分で楽しめるような設計があると良いかも知れない。プロモーションはあくまできっかけであり、そのきっかけを基にして、どのように接点を持ち続け、コミュニケーションを取るかも重要になってくる。
今回の『Anima』を通じて、筆者自身のカンパリに対するイメージも変わった。カンパリは長くに渡りアートに対して注力してきたグローバルブランドの一つだが、どちらかと言えば、カラフルなイメージの展開がされていたような印象を抱いていた。今回『Anima』を通じて、本来の薬草酒としてのビターさ、ミステリアスな雰囲気が作品により強調されており、そのことを改めて実感させてくれたように感じる。
「サプライヤー」「ホテル」「daisydoze」の三者それぞれに可能性を感じた一夜であった。どのように魅せ、どのように体験をさせるかという点においても、様々な企業にとっても示唆に富んでいると感じた。機会があれば、一度足を運んでみてはいかがだろうか。
担当:小川