ES、CS、OSのバランスを踏まえオーナーに選ばれる地位を築く
----2023年春以降の状況をお聞かせください。
2023年 4~8月までの累計を見ると、稼働率はコロナ前に及ばないものの、単価を上げることができていることからRevPARはコロナ禍以前の水準を超え、当社が運営するホテル全体が堅調に推移しています。23年度の着地においてもコロナ前(2018年比)の水準を上回る見込みです。
好転に向かうターニングポイントは、2022年 10月に日本政府が踏み切った水際対策の緩和です。日本の文化や食といった観光資源は外国人にとって魅力的に映っていることを背景に、円安もプラスに働いた結果、欧米からのお客さまを中心にインバウンドが戻ってきました。中国についても、消費単価の高い個人客から戻りつつあると感じています。
こうしたトレンドのおかげで、宿泊部門の売り上げはコロナ禍以前を超える状況が生まれています。日本政府は、2030年のインバウンド目標数として年間 6,000万人を掲げていますが、人数だけでなく消費単価を上げることで宿泊の市場はインバウンドによって今後も成長すると見ています。
宴会部門については、コロナ禍前の8割程度まで回復しました。2023年 5月にコロナが 2類から 5類に移行したことで、対面での宴席や会合などの開催に対する企業のマインドも積極的な方向に向かい始めました。
少人数の宴席、リモートとのハイブリットなどスタイルの多様化に応えながら、どのような付加価値を提供できるのかが、宴会部門の大きな課題となります。
----コロナ禍をへて、ホテル市場はどのように変化していくと考えますか。
ホテル市場は 2極化が進むと考えています。パーソナライズされたホスピタリティーを高単価で提供するラグジュアリーホテルと、可能な限りローコストオペレーションで運営する宿泊特化型ホテルに明確に分かれていくのではないかと予想されます。
2022年4月に西武・プリンスホテルズワールドワイドに社名変更し、従来以上にプロフェッショナルなオペレーターとして本格的に事業活動を推進しています。そのためオーナーに選ばれる要素を重視し、競争優位性をどのように構築するのかが鍵ととらえています。ホテルビジネスの先進国であるアメリカのマネジメント手法と、日本独自のホスピタリティーを融合することが重要だと私は考えています。 前提として、オペレーターはオーナーが求めるものを理解しなければなりません。
ホテル業界はどちらかと言うとホスピタリティー産業として見られる傾向が強いと思いますが、オーナーにとっては不動産業であり、オペレーターは、オーナーのために不動産の資産価値を向上させる責務があります。経営上は、GOP(営業総利益)の最大化という視点を持ち続け、国内外のさまざまなブランドに合わせたサービスクオリティを提供することでグローバルな競争において選ばれるホテルというポジションを確固たるものにしなければなりません。
その上でES(従業員満足)、CS(顧客満足)、OS(オーナー満足)のバランスをどのように取るかを考えていきます。短期的な利益を追求すれば CSが毀損されますし、CSだけを追求すればOSが毀損されます。三つの満足のバランスを維持することが、オペレーション企業の経営感覚において大きな要素となります。