一人一人の気付きをスタッフ全体で共有する
----貴社は、2004年頃から顧客満足度のランキング 1位を連続で獲得し、従業員の定着率も高い。リッチモンドの強さの理由はどこにあると思いますか。
接遇や振る舞いなどの基礎トレーニングは、力は入れていますが、他社と大きくは変わりません。異なる点があるとすれば、「現場のスタッフがお客さまに何をして差し上げたいのか」「経営者は、その従業員が実現したいことをいかにサポートするのか」を大切にする姿勢に尽きると思います。本部や上司からのいわゆるトップダウンは、当社ではほとんどありません。代わりにボトムアップで、常にお客さまと接していろいろな声を聞いている現場スタッフが、「お客さまにこうしたら喜んでいただけた」と言ったら、「じゃあそれをほかの店舗でもやっていこう」と記録して横展開する仕組みができています。しかも、「必ず記録しなさい」というマニュアルはなく、スタッフ一人一人の判断で、顧客システムに登録するのです。この積み重ねと、彼ら、彼女らの「こうありたい」を実現することこそが、究極の顧客満足につながると考えています。
----ロイヤルグループということで、 “食 ”は大いに期待していますがいかがでしょうか。
直営の朝食ラウンジがあるホテルもありますし、「ロイヤルホスト」や「シズラー」が館内にあり、そこで提供しているホテルもあります。外部委託しているケースもありますね。かたちはさまざまですが、外食を生業としている企業のグループですので、人と同じくらい食を大切にしており、価値を感じていただけるコンテンツにする努力をしています。
---- CS(顧客満足度)向上のために、意識されていることはありますか。
繰り返しになりますが、創業時から、スタッフの主体性は大切にしています。例えば、スタッフ主体の「CS向上委員会」という会議があるのですが、そこで以前決まったのが、「客室に何をおいて欲しいか全店でアンケートをとる」という内容でした。アンケート結果では消臭剤が 1位になり、次月には全店全室に消臭剤を置きました。そうやってアルバイト・社員関係なくスタッフが主体的に行動することが重要で、彼らがやりがいを持って働いてくれると、お客さまにもしっかりと伝わると考えています。それがチェーンのどのホテルでも感じられることが安心につながり、「出張、旅行先にリッチモンドがあるのなら間違いない」と選んでいただける優位性につながってきたのではないでしょうか。
----常にお客さまと接する現場の声を真摯に受け止め、クイックにアクションを起こす。結果、スタッフに主体性が生まれる。良い環境だと思います。
これこそが、外食からホテルに携わることで生まれた強みであり、レストラン業界で培ったQSCA(Quality、Service、Cleanliness、Atmosphere)に相通じる部分です。支配人には実際に「ロイヤルホスト」で店長を務めていた方もいますので、レストランで構築された“イズム”がホテル事業につながっていったのではないでしょうか。パートやアルバイトの方も、ロイヤリティ高く働いていただくためのノウハウが既にあったのではと。裏を返せば、いい意味で既成概念を持たず、「お客さまにとって何が喜ばれるのか」を目的にできたところも、既存オペレーターにはない強みになったのではと思います。
加えて、私たちは一人のお客さまをお迎えするウェルカム感を非常に大切にしています。エントランスに入った瞬間から、「自分が迎えられている」という気持ちになっていただくために、さまざまな準備をしているのです。チェックイン時間にせわしくフロントで電話を取ったり、他の作業をしないで済むよう、時間をずらしてオペレーションをしています。