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HOTERES Entertainment Select! Vol.4

世界的エンタメマーケティングのプロが見る、日本の魅力発信と方法論

2023年06月12日(月)
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APPLE時代。部署を跨げば別会社のような環境ゆえに、社内啓蒙活動も非常に大切。自身の仕事を社員に知ってもらうためのプレゼンも、幾度となくしたという。 聴衆を退屈させず、いかに分かりやすく、人の気持ちを掴む話し方ができるかが求められる瞬間だったと、当時を振り返りながら語ってくれた
APPLE時代。部署を跨げば別会社のような環境ゆえに、社内啓蒙活動も非常に大切。自身の仕事を社員に知ってもらうためのプレゼンも、幾度となくしたという。 聴衆を退屈させず、いかに分かりやすく、人の気持ちを掴む話し方ができるかが求められる瞬間だったと、当時を振り返りながら語ってくれた


長引くコロナ禍に、世界がコロナとの共存を始め、観光業界も市場の再活性に動いている。その中で、改めて世界の観光市場で日本が注目されている。コロナ自粛の中、コト体験に対する新たな価値観が多く生まれた現在、これからの時代に求められる観光魅力発信の課題は何なのか? 数々の世界的ブランドでエンタメマーケティングとブランディングを手掛けてきた、TRENDS tokyo代表取締役の森部友彰氏にお話を伺った。 

TRENDS tokyo 代表取締役  森部  友彰氏 
TRENDS tokyo 代表取締役 森部 友彰氏 


日本人の認識以上に、日本は世界から注目されている!
 
 森部氏は、幼少期をニューヨークで過ごし、大学卒業後は日本に加えニューヨーク、上海を拠点に仕事をするなど、海外での経験が豊富だ。昨年、代表取締役に就任した「TRENDS tokyo」はパリに本社があり、最近では欧州での経験も増えつつある。そんな中、日本文化というコンテンツの立ち位置について、改めて思うことがあるという。
 
「海外における日本文化に対する認知や注目の現状を、われわれは今一度、確認する時期を迎えているのではないでしょうか? 例えば先日パリに出張した際に、現地のスタッフと日本の話題になったのですが、とにかく日本のアニメやゲームに詳しい。彼女に限らず、海外で日本文化が話題になる際に、アニメや漫画、ゲームがトピックとして取り上げられることが多く、海外における認知の深さやカルチャーへの定着を感じる場面が増えています。もちろん、日本の食、美術や伝統に対するこだわり、ホスピタリティなどに対する注目度や興味も同様で、この点に関して、日本人側が等身大に認識できているのかどうか? 疑問に思うことすらあります。情報発信する上で、発信先市場におけるレディネスを把握していることは非常に大切なことなので、今一度見直してみるとよいのではないでしょうか?
 
 また、こういった土壌がある中で、実は残念に思っているのが、オフィシャルな発信における硬さ”です。SNSの発達で、“私”における発信については、見せ方や発信の仕方が上手だったり、面白い人も多いですし、グローバルにインフルエンサーとして評価されている人も増えています。しかし、いざそれが“公”主導のものになると、正しくはあるけれども、面白さが弱いコンテンツになっていることが多く、もったいなさや違和感を感じることが少なくありません。また、小さな企業や個人が、軽やかに発信しうる公的制度がまだまだ整っていない点も、悩ましさを感じる点です。私自身、日本の伝統文化や美術・工芸、そこに携わる方たちのクラフトマンシップに対して非常に興味があり、好きでもあるので、もっともっと世界にその素晴らしさを知って欲しいと思っていますし、それらの魅力発信をもっとスムーズにできる環境整備の必要性を感じています」。

 

NIKE時代に立ち上げたマーケティングアカデミー「TERAKOYA 03」。 今でも年に一度は皆で集まりALL HANDSが開催される揃いのデストロイヤージャケットは卒業生の証
NIKE時代に立ち上げたマーケティングアカデミー「TERAKOYA 03」。 今でも年に一度は皆で集まりALL HANDSが開催される揃いのデストロイヤージャケットは卒業生の証


発信におけるスピード感の重要性
 
 では、どういった点が改善されると、より良い発信になるのだろうか? 「先述したプロセスの簡略化や環境整備に加え、写真や動画の撮り方や構成など、コンテンツの表現におけるさまざまな要素を総意工夫することは常に求められる点だと思います。そして、それ以上に大事なのが、言語によるコミュニケーションではないでしょうか? 例えばですが、『NIKE』の仕事で上海に駐在していた際、スタッフは国籍に関わらず、100%英語をしゃべることができました。ですから、国籍や文化の違いがビジネスにおけるコミュニケーションを阻害する要素になりませんでした。しかし、日本支社では英語がしゃべれるスタッフの比率が半分で、これは他の外資系企業で仕事をしていた際も概ね同じような状況でした。グローバルな土壌でビジネスをする上で、この点が情報伝達や理解におけるスピードや質の低下につながることが少なくありません。これはツイートやSNSでの発信においても同様のことが言え、時に絵文字やアバターでの表現が言葉を超えた伝達やスピード感を持つこともありますが、本質の部分が伝えきれないことが多いのも事実です。表現や伝え方については、そのときどきの時代が持つ特性や技術に呼応したものを活用していいと思うのですが、きちんとした説明を伴った発信が、特に伝統や文化といった長年培ってきたものが背景にあるコンテンツについては、なされるべきだと考えています。そういった意味で常々言われてきていることではありますが、言語に関する問題の解決と前進が、日本が世界にコンテンツを発信する上で重要であり、今一度向き合うべき課題だと感じています」。
                                           
情報過多な時代だからこそ、特別感のあるキュレートを!
 
 そんな森部氏が日本観光をプロデュースするとしたら、どんなコンテンツを提案するのだろうか? 「一般の方がなかなかアクセスできない、ニッチでディープな、宿泊客オンリーかつ、日本に来たからこそ体験できるコンテンツを作れたら面白いと思います。今はガイドブック然り、SNS然り、情報が溢れている時代ですが、情報過多ゆえに、何が本当に面白くて魅力的なのか? 解りづらくなっている面もあると思います。ですから、私にアクセスしてもらえるのであれば、内容はゲストのリクエストもありますから今具体的なプランがあるわけではありませんが、“森部に頼むからこそ体験できる”といった、特別感のあるキュレートを反映した“更に魅力的な日本”を世界に紹介できたらと思いますね」。
 
 Apple在籍時、キュレーション能力はもとより、豊富な経験と人脈を持つ人のみが任命される、世界でも数少ないAppleプロダクトの魅力啓蒙を目的とした“Today at Apple”の日本責任者として活躍した森部氏。そんな彼の発想が、日本観光に新たな魅力を与えてくれることは予想に易い。中でも、日本が弱いとされる富裕層向けサービスにおいて、その力は強く発揮されるだろう。渡航制限が解除される今、世界へ向けた魅力発信に力を入れたい企業は、ぜひ森部氏の力を頼ってもらいたいものである。

TRENDS tokyo
https://trends.tokyo/
 

Today at Apple。丸の内ストアで開催した栄えある第一回目のセッションは、アーティストのSHUN SUDOを迎えて。キュレーション能力をフルに活かしたアーティストセレクションと魅力あふれるプログラム内容は常に人気が高く、多くの参加者で賑わった
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趣味で集めているそば猪口。その日に飲む日本酒を決めてから、そのラベルに一番あった器を決めるといい、SNSに投稿される写真を心待ちにするファンも多い。写真は、製造過程で欠けができた器に、敢えて釉をかけて焼かれたという粋な一品。この器には、森部氏の故郷の酒である奈良の「篠峯」が合わされた
趣味で集めているそば猪口。その日に飲む日本酒を決めてから、そのラベルに一番あった器を決めるといい、SNSに投稿される写真を心待ちにするファンも多い。写真は、製造過程で欠けができた器に、敢えて釉をかけて焼かれたという粋な一品。この器には、森部氏の故郷の酒である奈良の「篠峯」が合わされた

​担当:毛利愼 mohri@ohtapub.co.jp

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