22館のうち 11館が女性総支配人20代の総支配人も
----ここからは、20代の若さで「界日光」の総支配人を務める五十嵐さん自身のバックグラウンドについて教えてください。
私は 2017年に星野リゾートに入社し、「界日光」勤務を経て、2022年7月より同館の総支配人を務めています。ただ、もともとホテリエを目指していたわけではなく、地元の宇都宮大学で地域活性化や街づくりについて学んだことが、この世界に入るきっかけになりました。地域で活躍する人材育成を目指す同大学の教育学部総合人間形成課程(※現在はなし)では、実際に地域経済を活性化するための人脈作りから PRの仕方、運営に至るまでを学生が考え、計画を立て、自ら実践していくというカリキュラムを体験しました。
そこで、地元の職人さんや生産者さんの話を聞き、関わりを持つにつれ、私自身、「地域に根ざした企業で働きたい」と思うようになりました。就職活動の際には、温泉、食、和、などの要素を持った「旅館」には将来的に大きな可能性があると考えました。その中で星野リゾートは、たとえ若くても思ったことを言えるフラットな組織文化があること、また、社内に学ぶ文化や制度があることなどが決め手となって入社を決めました。
----ホテルの総支配人と聞くと、まだまだ偏ったイメージがありますが、現職に至った経緯はどのようなものですか。
私は入社後すぐに「界日光」に配属されました。1年目はマルチタスクを通して仕事の基礎や運営のイロハを学び、2年目は、地域の魅力を掘り起こす…「羊羹フォンデュ」のような企画の立案や実施に携わりました。その経験を通して気づいたことは、地域の魅力に気づき、それに即したサービスや企画を提案できるのは、その場所で働くスタッフだからこそできるということ。また、そんな地域のスタッフの力を結集することが、会社の競争力になる、ということです。そこで、個人としてのスキルを磨くことも大切ですが、同時にチームとして競争力を高めたいという思いから、自らがチームをリードする挑戦をしたいと思い、総支配人に立候補し、受け入れられました。
「界」全体について言えば、現在は22ある施設のうち、11の施設の総支配人が女性です。星野リゾートでは、入社2年目から総支配人等のマネジメントポジションに立候補できる「マネジメント立候補制度」というものがありますので、20代で総支配人職に就くことは、決して特殊なことではありません。そもそも「総支配人」というポスト自体、ゴールでも、昇進先という位置づけでもありません。「役割のひとつ」という考え方なので、総支配人になっても、別の部署で挑戦したいことができれば、総支配人を退く選択肢もあり、そのことを後ろめたく感じることもありません。「キャリアは自ら描くもの」というのが我が社のモットーなので、そこは他社とは少し異なるところかもしれません。