CT Spirits Japan(シーティー スピリッツ ジャパン)株式会社(東京都渋谷区 代表取締役社長 阿部哲)は、3月23日(木)に東京・WITH HARAJUKU HALLにて、自社が取扱うブランドの世界観と、そのブランドを使った様々なカクテルを体感できるイベント「CTSJ Brand &Cocktail Festa 2023」を開催した。本記事はそのレポートである。
CT Spirits Japan株式会社 代表取締役社長 阿部哲氏
CT Spirits Japan 株式会社は、世界6位のスピリッツ企業であるCAMPARI GROUPが持つブランドの日本市場でのさらなる発展、成長のために2020年2月に設立された日本法人だ。日本市場では、CAMPARI社との合弁として設立されており、日本市場に即した細やかな対応が出来るようになっている。
その成果も数字として表れており、昨年2022年の売上は前年2021年の140%、コロナ前の2019年と比べても113%という業績を残している。特に、オーガニック(既存ローンチ商品)成長が順調で、ワイルドターキーやグレングラントといったウィスキーに、カンパリ、アペロールの販売実績が大きく伸長している。日本市場おけるKSP-POSを基にしたシェアの伸び率は、他のグローバルスピリッツ企業を押さえてTOPの伸び率となったと説明があった。
ポートフォリオには、「CAMPARI」をはじめ、「APEROL」、「WILD TURKEY」、「THE GLEN GRANT」、「APPLETON ESTATE」、「Trois Rivières」、「SKYY VODKA」、「Grand Marnier」、「CINZANO」、「CHAMPAGNE LALLIER」など錚々たるブランドを取り扱っている。読者の職場にも、多く取り扱いがされているのではないだろうか。
CAMPARI GROUPには、“TOASTING LIFE TOGETHER”という基本理念がある。それは、「お客様やパートナーと共に、CAMPARI GROUPの商品とそれらを使ったカクテルを通じて、人生の様々な瞬間を祝福する手助けのために働く」というもので、今回のイベントではそれを体験できるコンテンツが充実していた。
具体的には、イベントでは新発売のX-RATEDを含む各商品の試飲に加え、注目されているバーテンダーのトークショーとオリジナルカクテルの提供、トップバーテンダーからカクテルのレクチャーと実際にバーツールを使ってのカクテル試作体験など楽しむことができた。その様子を以下でレポートしたい。
「アペリティーボ」を日本に
CAMPARIはイタリアを代表する酒類であり、当然、イタリアのFB文化とも強い関係を持っている。特に、イタリアの大切な食習慣である「アペリティーボ」(ディナーの前に、家族や友人、恋人と一緒に食前酒と共におつまみを楽しむスタイル)は現地に行くと必ず目にする。アペロールを辛口スパークリングワインとソーダで割った『アペロールスプリッツ』は、アペリティーボの代表的なカクテルだ。アペリティーボコーナーでは、その「アペロールスプリッツ」と「カンパリスプリッツ」が楽しめるようになっていた。
Bar文化とトレンドの発信
日本を代表する注目のバーテンダーが登壇し、CAMPARIブランドアンバサダーの小川尚人氏とBar文化とトレンドを深堀するトークショーも開催された。江刺幸治氏(SPIRITS BAR Sunface SHINJUKU)を皮切りに、鈴木敦氏(The Bellwood)と永峯侑弥氏(The SG club)、南雲主于三氏(Spirits&Sharing.inc)に伊藤学氏(Mixology Heritage)と日本のBarシーンを牽引するTOPバーテンダーがそれぞれのテーマについて語り合った。登壇後はオリジナルカクテルの提供もあり、来場者が多く駆けつけていた。
また、会場にはトップバーテンダーからレクチャーが受けられ、カクテル試作を一緒に楽しめる「カクテルラボ」も併設されていた。百聞は一見に如かずではないが、色々と気にせずに試せる場というのは貴重であり、特に若い方々には良い機会を提供していると感じた。
カクテルラボで提供された豊かなポートフォリオ
合弁の意義とエコシステム:コロナ禍を経て
会場を回って感じた事も併せてお伝えしたい。冒頭でCT Spirits Japanの成り立ちに触れたが、国際経営の分野ではOLIやウプサラモデルという市場へのエントリーについてのモデルが知られている。特に日本市場は、小売をはじめ非関税障壁が高い国として昔から指摘を受けて来た。そうした事情もあり、市場内で細やかな対応をするには、現地のノウハウを持った企業と合弁をする方が、取引コストが低く済むことになる。名だたるグローバル大手小売企業が相次いで撤退する背景の一つには、こうした流通上の課題や企業資源配分の問題がある。
CAMPARI GROUPの過去のAnnual reportを見ても、セグメント別でみれば、アジア・パシフィックがグループの中で占める割合は約7%と他のグローバル企業と比べてもまだまだ伸びしろがある状況であり、力を入れていることも伺える。また、自社で販売営業をするということは、ブランドをきちんと活かした戦略をとることが出来るということでもある。
ポートフォリオを見ても、Bar業態をメインにした業務用市場が主であることが推察され、業務用市場でいかに商品認知から連想、態度、愛着を形成していくかが企業にとっての課題となる。そうした意味で、“TOASTING LIFE TOGETHER”という視点は重要で、企業から顧客への一方的なものではなく、双方的な関係により市場でのプレゼンスを上げていく事が成功には欠かせない。
だからこそ、今回のイベントでは、「アペリティーボ」文化だけでなく、Bar文化やトレンドを考えたり、体験したりという工夫が随所になされていた。また、原宿という本社所在地で開催したことも評価したい。なぜなら、ESG含め、企業が地元とつながることは企業だけでなく、社会にとっても有益であるからだ。もちろん、推測にしか過ぎないが、会場を別のラグジュアリーな場所ですることも可能だったはずである。オペレーションの問題もあるだろうが、そこで本拠地となる原宿で開催した意味は大きいと感じる。
“TOASTING LIFE TOGETHER”には、顧客と実際に飲む消費者だけでなく、流通を含む多くのステークホルダーとの関係が込められている。読者の中には、コロナ禍を経て、消費者の退店の時間が早まっていることを肌で感じている方もいるかと思う。そうした状況下、「アペリティーボ」文化が果たす役割には可能性があり、会食や出会いの機会を乾杯(コロナ禍を経て、改めて、会える機会を祝福する)という文脈をつくることも出来るのではないだろうか。
また、展示会や試飲会は、取引先に商品を認知、体験してもらうだけの場ではない。ステークホルダーみんなで、どのように市場で活用をしていけばいいのか、その創造性や可能性を対話する場でもある。実際、筆者がSKYY BLUEのブースを訪れた際、正直味をみるくらいの感覚で試飲をした。しかし、クリアな味わいだけでなく、シトラスのリフレッシュ感に加えて、無駄のない「シンプルさ」に驚きを隠せなかった。元酒類輸入業者の営業として、「売れる」と確信した瞬間でもあった。
グローバルブランドは、なかなかローカライゼーションで特殊なコミュニケーションの仕方を行うことが難しい。しかし、20代後半から30代にかけて、仕事に打ち込み、日々を充実したものにしたい方にとって、帰宅後にニュートラルに戻る瞬間を演出するためにピッタリの商品だと個人的には感じた。その後、自身でも箱買いして、様々なシーンで検証をしている。今のところ、風呂上がりに1本だけ飲むのが、自分には丁度よく、その後に読書をするルーティーンの切っ掛けとして重宝している。客室にもそうした需要があれば、ホテルブランドのスタイルによっては効果的かも知れない。
合弁である分、市場での柔軟性はある程度担保される。世界中で流行しているネグローニだけでなく、アペロールスプリッツを含めまだまだ日本市場で活用していく方法がたくさんあると感じている。Bar業態がメインとなるかもしれないが、シャンパーニュ・ラリエも活用することで、レストランやソムリエといった方々にも広く訴求することが可能となる。
業務市場の盤石化と合わせて、消費者への認知と飲み方提案、ライフスタイルの提案と並行することで“TOASTING LIFE TOGETHER”のエコシステムを築き、日本の豊かなFB文化への貢献と、更なるCT Spirits Japanの発展を期待したい。
担当:小川