Q:アコレード・ワインズ傘下になって変化したことはありますか?
2015 年のアコレード・ワインズの買収はとても大きなオーナーシップの変更でしたが、ほとんどのスタッフ、ワイナリー、そして最も重要であるブドウ畑に変わりはありません。ワイン醸造とブドウ栽培の知識へのアクセスが増えたことは、私たちのワインの品質向上と成長に重要であり、その結果、より多くのスタッフ、設備、ブドウを使用してワイン醸造の規模を拡大することができました。輸出量も増加し、世界のさまざまな市場を見る機会を得ました。同時に、アコレード・ワインズは環境に配慮した活動に取り組み始めました。私たちの土地を子供たちや次の世代に健康で安全な場所として残すことは、私たちの責任の1つです。会社が大きくなるにつれて、私たちは今後も社会的責任を果たすことを重要な課題として取り組んでいきます。
Q:日本市場をどのように捉えていますか?
日本には非常に豊かな食事とお酒の文化があります。さまざまなワインスタイルをさまざまな種類の料理とペアリングして探求・発見できる土壌があります。食事も飲料も選択肢が多いということは、常に激しい競争を意味しますが、同時に選ばれるチャンスもあります。日本には洗練されたワイン文化があり、日本人はグラント・バージのワインの価値と品質を尊重してくれると信じています。ですので、一人でも多くの日本の方にグラント・バージの最上級のワインであるミシャックからお求めやすいベンチマークまで試して頂き、ご自身の好みのワインやお好きな料理との相性を見つけて頂きたいです。
Q:日本でも人手不足が問題になっています。オーストラリアワイン業界の課題についてお伺いさせて下さい。
人的資源不足の状況はオーストラリアでもほぼ同様ですが、私たちにとってこれはコロナによる一時的な問題で、一般的にはほぼ通常の状態に戻っています。今ちょうど畑では収穫を迎えており、この時期には多くのスタッフを雇用しその50%は海外のワイン関係者に頼っていますが、渡航が通常通りに戻ったため、問題なくスタッフを集めることが出来ました。インフレ、高金利、金融引き締めにより、セールスやレストラン経営が圧迫され、さらに中国による豪州産ワインへの関税問題が加わり、厳しい数年でしたが、オーストラリアのワイン産業は回復力があり、過去にこれまでも困難に直面してきました。しかしそのおかげで、ワインの品質、会社、業界にとって最高の結果を達成することにさらに集中できるようになると思います。我々の課題の1つとして、若い世代がワインを飲む量がますます少なくなり、ビールや RTDを飲む傾向にあることも挙げられます。しかし、これまでトレンドが行き来するのを見てきましたが、ワインは一定しており、非常に長い歴史、複雑さ、発見があり、常に世界で最もエキサイティングな飲み物であり続けることに変わりはありません。
Q:この来日を含め、日本の業務用市場についての印象をお伺いさせて下さい。
日本のソムリエやバイヤーのプロフェッショナリズムと知識にはいつも心から感心しています。来年来日した時に、オンプレミス市場でグラント・バージを見る機会が今回よりも増えたら素晴らしいことですが、私は彼らご自身のセレクションを尊重します。オーストラリアのワイン文化と日本との最も異なる点は、オーストラリアではほとんどのレストランが BYO(持ち込み)を受け入れていたり、持ち込みNGのお店はワインの選択肢が非常に豊富であるということです。どちらが良いと言うつもりはありませんが、オーストラリアのオンプレミス市場の方がカジュアルでオープンだと思います。また、聞き及んだ話ですが、日本の若者にとってワインは敷居が高く複雑すぎて良し悪しがわからないので、最初の選択肢としてワインを選ぶということはまれであると聞いたことがあります。彼らがよりカジュアルでリラックスした環境で、ワインを楽しく試したり飲んだりする機会が増え、プロフェッショナル達がその手助けをすることができたら素晴らしいと思います。
Q:グラント・バージのワインはバランスに優れており、卓越した飲みやすさがあると感じます。まるで、日本料理の引き算、フランス料理の足し算といった、足し算引き算の両方の良さを兼ね備えているようにも感じられます。秘訣はなんでしょうか?
一般的に、ワイン造りは干渉しない方が良いとされていますが、最高のワインは非常に早い段階からバランスと流れを示し、これらは品質のレベルに関係なく最高のワインとなります。ブレンドはおそらくワインの真の芸術であり、引き算と足し算の両方です。完璧なワインは非常にまれであるため、ブレンドすることでワインがより良いバランス、香り、質感を必要とする部分をピンポイントで見つけることができるようになるのです。
時には、そのためにブレンドから何かを取り去ることもあります。ブレンドの1%や2%の変化で、最終的なワインに大きな違いが生まれます。
ブドウ/ワインは自然の産物であり、母なる自然が季節の中で私たちの方向性を決めてくれますが、グラント・バージでの30年の経験とブドウ畑の知識は、私たちのワインにバランスをもたらすために何が必要かを理解するのに役立っています。ワイン作りは、あらゆる面でハードワークと細部へのこだわりが必要で、良いブドウだけが良いワインを作ることができるのです。
【レポート】長い歴史と古い畑を継承しながら進化を続けるワイナリー「グラント・バージ」
2023年03月13日(月)