ログイン
検索
  • TOP  > 
  • 記事一覧  > 
  • 【レポート】2022年度の「アジアのベストバー50」にランクインしたシンガポールのバー「リパブリック」の実力

【レポート】2022年度の「アジアのベストバー50」にランクインしたシンガポールのバー「リパブリック」の実力

2023年03月03日(金)
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

2023年2月24日(金)ザ・リッツ・カールトン東京にて、ザ・リッツ・カールトン ミレニアシンガポールのバー「リパブリック(Republic)」より、パウロ・ナランジョ氏を招いた1夜限りのゲストバーテンディングイベント『バーテンダー テイクオーバー 第五弾』が行われた。本記事はそのレポートである。(カクテルの様子への飛ばし読みはこちら。)



「リープ・フロッグ」
シンガポールといえば、今や押しも押されもせぬ世界有数のスマートネーションとして知られている。アジアの歴史を見ても、輸入代替期から輸出志向期を経て産業構造が高度になっていくが、シンガポールの成長も非常に早かった。こうした成長は、リープ・フロッグが思い出される。政府主導による外資導入などが功を奏した事は広く知られている。
 
今回、そんなシンガポールより、世界を代表するバーからバーテンダーが来るとなれば期待も高くなる。1960年代をイメージしたザ・リッツ・カールトン ミレニアシンガポールのバー「リパブリック」は2021年4月に開業した。その1年後となる2022年度の「アジアのベストバー50」の第12位に入賞し、シンガポールのカクテルシーンで一躍注目を集める素晴らしいデビューを飾っている。
 
この早さも驚きである。後でも触れるが、昨今のデジタル化の文脈で語られることの多いアジリティの高さは、短期間の内に経済成長がなされた国ならではだと感じた。多民族国家に加えて、バイオポリスに代表されるR&Dが行われるエコシステムを支える都市機能により、海外からの旅行のみならずビジネスでも重要な拠点となっており、様々な国の人々が行きかう。そうした状況下では、否応なく成長が早くなる。
 
「アジリティ」
しかし、成長が早くともそれについていける俊敏さが備わっていなくては取り残される。今回来日し、腕を振るってくれたパウロ・ナランジョ氏は、そのアジリティを感じずにはいられないカクテル捌きを見せてくれた。
 
日本のバーテンダーは、カクテルコンペティションの世界大会の様子を見ても丁寧に仕事をし、味の完成度にも重点を置いている。こうした丁寧な仕事も重要であるが、変化の激しい環境で対応するためには、スピードも考慮しなくてはならない。スピードとのトレードオフをどう捉えるかということは、バーに限らず日本全体の課題ともいえる。
 
以前、ザ・リッツ・カールトン東京の総料理長であるサンドロ・ガンバ氏に話を伺ったことがあった(週刊ホテルレストラン2023年1月20号掲載)。ガンバ氏は日本の調理現場は、作業は丁寧で細かいが、国際比較をした際に時間を掛け過ぎている点を指摘していた。また、マネジメントにおいても、100%水準でなければ昇進できないのではなく、少し基準に満たなくともチャレンジする事が重要ではないかと指摘していた。
 
まさしくこの点が、グローバル感覚で日本に欠けている点ではないだろうか。このアジリティという点で、ナランジョ氏が見せてくれたカクテル捌きは、グローバルの舞台で日々磨かれていることを感じさせてくれるものであった。
 
「居心地の良さ」
こうして国際感覚を目の当たりにすると、日本の課題が見えてくる反面、日本の良さも見えてくる。今回、それを感じさせてくれたのが、「ザ・バー」ヘッドバーテンダーである和田健太郎氏だ。
 
今回のテイクオーバーでも、和田氏は一つ一つのカクテルを丁寧に説明し、コミュニケーションを大切にしていた。このおもてなしともいえる心遣いがどことなく日本の良さとして感じられた。海外のバーに行くと、結構放置されることもある。和田氏は、フロア全体にも目くばりをしつつ、コミュニケーションにより場を支えていた。
 
こうして育まれる居心地の良さ。この居心地の良さをつくれるのは、和田氏のタレントであると感じる。普段はヘッドバーテンダーとして活躍するも、テイクオーバーでは、縁の下の力持ちとして活躍する。和田氏の存在が無ければ、一夜の舞台を預かるバーテンダーへの負担も大きくなり、また顧客の満足度も違ったものになっているであろう。
 
「ユニティ」
そうした環境下で存分に力を発揮してくれたナランジョ氏のカクテルは、「ユニティ」という点がカギになると感じた。ナランジョ氏にカクテル創作における重要視する点を聞いたところ「バランス」だと答えていた。
 
バランスとは、均衡、つまり、つり合いが取れていることであり、要素は少なくとも2つなくてはならない。例えば、酸味と甘みのバランスといったように、酸味だけでバランスを語る事はできない。
 
この後にレポートする各々のカクテルを飲んで感じたのは、バランスの次元が五味といった平坦なものだけでなく、口当たりといった他の次元が含まれたバランスに優れているということだ。二次元でのバランス(等しい点の集合)は円だが、三次元では球になる。その全体の一体感(ユニティ)に優れているのがナランジョ氏のカクテルだ。以下、イベントで提供された4つのカクテルをレポートしたい。

月刊HOTERES[ホテレス]最新号
2024年11月15日号
2024年11月15日号
本体6,600円(税込)
【特集】本誌独自調査 総売上高から見た日本のベスト100ホテル
【TOP RUNNER】
フォーシーズンズホテル大阪 総支配人 アレスター・マカルパイ…

■業界人必読ニュース

■アクセスランキング

  • 昨日
  • 1週間
  • 1ヶ月
CLOSE