----コンセプトを守るためにそぎ落としたものはどういったものですか?
建築によるそぎ落としとして、仕上げを無くしました。床も壁もコンクリートそのままで、普通はそこにクロスを貼ったりするのですが、素材そのものを生かした作りを意識しました。だから、素材そのものが仕上げになっているんですよね。また、天井を無くして、屋根をむき出しにしました。その代わりに見える板は全て、焼杉という、火を使って焼いた木を使っています。この焼杉も「焼く」という行為、「火」そのものに人間の本質があり、人間が本物の板から何を感じるのかを大事にしています。
次に、境界のそぎ落としとして扉などの仕切りを無くし、空間の境界を無くしました。これは、日常からの解放を意識しました。しかしお客様からの要望もあり、後から扉のある部屋も作りました。
最後に備品のそぎ落としとして、日常のツール、インフォメーションを無くしました。普段ケータイから膨大な情報量が得られていて、さすがにそれを没収することはできないけれど、テレビと電話は無くしました。そして地元の食材を地域のスーパーや市場に行き買って来て料理をする楽しみを味わってもらうために、キッチンは設置しました。外食もできるけれど、それでは飽きてしまうかなと思いまして。