環境と観光において日本は20年遅れている
----山下代表のご経歴についてお聞かせください。
もともと建築家として色んな大学で建築を教えていて、まちづくりに少しずつ着手しだしたのが東京大学で教えていた時です。当時はオリジナルの素材・構法の開発を得意としていたのですが、安泰ではないのではないかと考えるようになりました。そんな中ドイツにあるベーテルという場所に行ったときに、住民の4割が障がい者や高齢者にも関わらず、分け隔てなく住んでいる様子を見て、建築以上にまちづくりってすごいんだなあと感じました。そういった経緯で、東京大学でまちづくりの研究をスタートさせました。
次に慶応大学で教えていた時に学生たちと、世界では様々な地域でまちづくりが行われているけど、自分たちに置き換えたときに何があるんだろうということで、日本を調べ直すことになりました。日本を見たときに、大きな転換期は明治維新と太平洋戦争後の2回。その中で明治維新に着目して、江戸時代の260年間にどんな特徴があったか、みんなで見直そうと、5年間江戸時代の研究をしました。その中で見つけたものは、僕の中ではすごく大きかったんですよね。
今みんなSDGsって言っているけど、SDGsで2030年の目標に掲げているものを江戸時代では明らかに突破している。誰も世界で江戸時代のことを取り上げて話をする人はいないけれど、江戸時代には、何も捨てない、つまり土、糞尿、燃やした灰でさえすべてを綺麗に循環する仕組みがあったんです。このことを日本の展覧会や雑誌などで発表したけれど、なかなか日本では反応が少ないんですよね。この時に「環境」と「観光」というキーワードに対して、日本は海外に比べて20年遅れているんだなということを感じました。