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毛利愼の外食エンターテインメントVol.60

星野リゾートの精鋭シェフたちが大阪の味を、“Naniwa”グルメとして提案!

2022年12月28日(水)
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「OMO7大阪(おも) by 星野リゾート(以下、「OMO7大阪」)」外観。新世界や西成を近隣に持つ同施設がどのようなコンセプトを見せるのか? 開業前から非常に注目されていた施設だ
「OMO7大阪(おも) by 星野リゾート(以下、「OMO7大阪」)」外観。新世界や西成を近隣に持つ同施設がどのようなコンセプトを見せるのか? 開業前から非常に注目されていた施設だ

「毛利愼の外食エンターテインメント」、2022年最後の記事は「OMO7大阪」のレストラン、「OMOダイニング」に焦点をあててみたい。
 
ロケーションや文化から、星野リゾートが大阪でどのような施設を創生するのか? 数年前に開業がリリースされた際より、本施設の開業はさまざまなメディアが注目し、私自身も興味深く待っていた。今や観光地と化している新世界はまだしも、日本屈指のディープタウン・西成地区とどのようにつきあっていくのか? 一口でいうならば“濃厚な”大阪文化と星野リゾートのカラーがどこまで融合し、何を作り出すのか? おそらく、われわれの想像以上に、作り手である星野リゾートの道のりは大変なものだっただろう。
 
結論からいうと、結果は予想以上に“カラフルな楽しさ”とでも表現したくなるような、新たな大阪カルチャーの提案だった。同施設のエンタメ性やご近所ガイドOMOレンジャーについては、本誌連載「HOTERES Entertainment!」で既報の通りだが、今回は食い倒れの街、大阪に食の領域でどのように取り組んだのか? その点について、「OMO7大阪 by 星野リゾート」総料理長、瀧井杏香氏、「星のや東京」総料理長、浜田統之氏、「星のや竹富島」総料理長、中洲達郎氏のお三方に伺った。

写真左から「星のや東京」総料理長・浜田統之氏、「OMO7大阪 by 星野リゾート」総料理長・瀧井杏香氏、「星のや竹富島」総料理長・中洲達郎氏。ボキューズ・ドール国際料理コンクール、日本大会最年少優勝者にして世界大会で銅メダル受賞の浜田氏と、同コンクール日本大会優勝、世界大会入賞経験のある中洲氏が、期待のシェフである瀧井氏の若さと感性と融合することで、「OMO ダイニング」ガストロノミーは誕生した
写真左から「星のや東京」総料理長・浜田統之氏、「OMO7大阪 by 星野リゾート」総料理長・瀧井杏香氏、「星のや竹富島」総料理長・中洲達郎氏。ボキューズ・ドール国際料理コンクール、日本大会最年少優勝者にして世界大会で銅メダル受賞の浜田氏と、同コンクール日本大会優勝、世界大会入賞経験のある中洲氏が、期待のシェフである瀧井氏の若さと感性と融合することで、「OMO ダイニング」ガストロノミーは誕生した

まず、「OMOダイニング」で提供される料理のコンセプトが、どういった経緯で誕生したのか伺った。
 
「『OMO』は弊社のブランドの中でも都市観光を楽しんでいただくことをテーマにしている施設ですので、当初はコース仕立てでの提供ではなく、アラカルトやビュッフェなどの形式で大阪グルメを楽しんでいただく方向で考えていました。しかし、代表の星野から『大阪No. 1を目指す、ラグジュアリーな方向にしよう!』という提案があり、現在のコース仕立てでのご提供になりました。そこで、瀧井と共に、「Naniwa KUSHI Cuisine」は浜田が、「Naniwa Neo Classic」は私が手掛ける、開発に至りました。ゼロからの挑戦ということで、当初はなかなかゴールが見えず大変だった時期もありましたが、ひとつは串かつ文化をベースに、一方は天下の台所である大阪の食文化の発掘や発見、さらには大阪のかたがたも知らないような大阪の伝統的な料理をというコンセプトのもと、それらを星野リゾートのフィルターを通した表現にしようということになり、現在の形となりました(中洲)」。
 
「『OMOダイニング』でご提供する料理はいい意味で完成形ではないというか? お客さまとのコミュニケーションやわれわれの進化、経験と共に変化していく、発展性のあるものだと考えています。ですから、開業前の開発においては、例えば私自身は住んだことがないのですが兄が大阪に住んでいることから触れてきた大阪での経験をベースに、中側と外側のふたつの側面から見る大阪文化を今回のコース開発に活かしました。また、瀧井は私どもと違い、『OMO7大阪』に常駐しており、ダイレクトにお客さまの反応や現地の情報などが入ってくる環境です。ですから、そういったものを積極的に私たちにあげてもらい、今後のメニュー開発に反映させることでわれわれの考える“Naniwa Cuisine”を進化させていければと思っていますし、瀧井完全監修のコースも誕生させたいと考えています(浜田)」。
 
今回、わずか23歳にして総料理長に瀧井氏が就任したことは、意欲ある人材にチャンスが多いといわれる星野リゾートの中でも、かつてない大抜擢だという。そこには瀧井氏がもつ確かな技術とセンス、さらに彼女の可能性に対する期待があったそうだ。彼女が今後『OMO大阪』をどのように引っ張っていきたいか伺った。
 
「まず、今回の開発にはとても楽しさを感じながら挑むことができましたし、浜田や中洲と一緒に企画できたことで、アレンジにはこんな表現があるんだとか、こんな調理方があるんだということ大変、勉強になりました。加えて、お客さまのお声を伺う中、例えば大阪出身だけどこんな食文化があることは知らなかったであるなど、ベースとなっている大阪料理の文化に驚いて帰られる方も多く、その部分をさらに深掘りしたご提案をしていきたいという気持ちが強まっています。今回、大阪という地でのチャンスに対しては、たこやきや串焼き、粉ものといった一般的にみなさまが思い浮かばれる大阪グルメの探求はもちろんなのですが、学生時代に出会ったなにわ野菜の魅力をより多くのお客さまに味わっていただきたいという思いを強く持っています。中でも、泉州の茄子や難波ねぎなど、物によっては農家一軒だけで守られているなにわの伝統野菜もあるので、そういった生産者さんを守る、そして一緒に成長するということをしていきたいと考えています(瀧井)」。
 
ちなみに瀧井氏が星野リゾートを就職先として希望したのにも強い理由があったという。
 
「もともと、料理をするようになったきっかけに、子供の頃に弊社グループ施設の星野リゾート トマムに家族旅行をした際の楽しかった思い出がありました。さらに料理の専門学校で学んでいる際に飲食関係のアルバイトをしていたのですが、私は料理をしたいと思って志願しても、“女性=デザートと洗い物”という文化が根付いていたり、中には『女性だから…』という発言と共に牽制されるような雰囲気があったりと、料理業界での可能性に疑問を感じた時期もありました。その中で、弊社には麓村塾(ろくそんじゅく)という社内教育のシステムがあることを知り、働くならここしかないという強い思いを抱き、新卒で入社しました。
 
入社後、トマムに配属になり、ビュッフェや『OTTO SETTE TOMAMU』で仕事をしていたのですが、弊社では女性だからということで差別されるようなことはまったくありませんでしたし、むしろ素敵な女性の先輩も多く、いろいろなことを教えていただき、任せてもらえました。ちなみに『OMO7大阪』自体の立ち上げは学生時代に知ったのですが、当時はあまりいいイメージがなかった場所に施設が開業し、それと共にまわりに新しいお店ができ、ファミリー層のお客さまが来てくださるようになり、新今宮のイメージが変わりつつあるのを今、目の当たりにしています。その中で、いままでのイメージを払拭し、さらに多くの人が遊びに来る場所にしたい、大阪に行くならここに泊まりたいとなる施設にしたいという気持ちが高まっています。そういった思いを料理を通し、大阪の魅力を伝えながら作り上げていくことが使命だと考えていますし、頑張っていきたいと思っていますので、是非皆さま、『OMO7 大阪』に足を運んでいただけたらと思います(瀧井)」。
 
瀧井総料理長と共に、浜田氏、中洲氏という星野リゾート精鋭シェフたちとの融合が“食い倒れの街大阪”でどのようなストーリーを生み出していくのか? 彼らが提案する“Naniwa”グルメの今後に期待したい。
 
「OMO7大阪 by 星野リゾート」
https://hoshinoresorts.com/ja/hotels/omo7osaka/

 

「Naniwa KUSHI Cuisine(なにわ串キュイジーヌ)」の一品。軽井沢の「ブレストンコート ユカワタン」時代から、浜田氏のシグネチャースタイルである“小さなコース”は串カツのプレゼンテーションにも。貝のムースやアメリケーヌソース、ロメスコソースなど、串カツというジャンルにフレンチの要素を加えることで“大阪&洋”のフュージョンテイストに仕上げている
「Naniwa KUSHI Cuisine(なにわ串キュイジーヌ)」の一品。軽井沢の「ブレストンコート ユカワタン」時代から、浜田氏のシグネチャースタイルである“小さなコース”は串カツのプレゼンテーションにも。貝のムースやアメリケーヌソース、ロメスコソースなど、串カツというジャンルにフレンチの要素を加えることで“大阪&洋”のフュージョンテイストに仕上げている
魚をダシで煮て提供する料理だが、かぶのポタージュと大根を粗くおろしたスープに鰈の串揚げを添える同じく「Naniwa KUSHI Cuisine」から、大阪の郷土料理“煮おろし”をスープ仕立てにアレンジした一品。通常、揚げたことでオリジナリティを出した。鰈の骨もチュイル(※串横にある黒い網状のもの)に仕立て、食材を無駄なく使う大阪の合理精神も反映した
魚をダシで煮て提供する料理だが、かぶのポタージュと大根を粗くおろしたスープに鰈の串揚げを添える同じく「Naniwa KUSHI Cuisine」から、大阪の郷土料理“煮おろし”をスープ仕立てにアレンジした一品。通常、揚げたことでオリジナリティを出した。鰈の骨もチュイル(※串横にある黒い網状のもの)に仕立て、食材を無駄なく使う大阪の合理精神も反映した
「Naniwa Neo Classic(なにわネオクラシック)」から、大阪の郷土料理として古くから親しまれている“箱寿司”をアレンジした一品。酢飯の代わりにアボカド、クスクス、ジャガイモなどをしきつめ、その上に魚介や卵をのせ、彩り豊かな前菜にアレンジした
「Naniwa Neo Classic(なにわネオクラシック)」から、大阪の郷土料理として古くから親しまれている“箱寿司”をアレンジした一品。酢飯の代わりにアボカド、クスクス、ジャガイモなどをしきつめ、その上に魚介や卵をのせ、彩り豊かな前菜にアレンジした
同じく「Naniwa Neo Classic」から、鰻を日仏の技法で“ネオ大阪料理”に昇華させた一皿。大阪料理を表す言葉に“始末の料理”という言葉があるが、代表的なものに鰻の頭を半助と呼び食す文化がある。フランス料理の技法に豚の頭を煮凝りにするテットドフロマージュというものがあることから、半助を煮凝りにし、マデラ酒のソースで煮た鰻と蒲焼きとあわせた
同じく「Naniwa Neo Classic」から、鰻を日仏の技法で“ネオ大阪料理”に昇華させた一皿。大阪料理を表す言葉に“始末の料理”という言葉があるが、代表的なものに鰻の頭を半助と呼び食す文化がある。フランス料理の技法に豚の頭を煮凝りにするテットドフロマージュというものがあることから、半助を煮凝りにし、マデラ酒のソースで煮た鰻と蒲焼きとあわせた
「Naniwa KUSHI Cuisine」から。施設内のガーデンエリア「みやぐりん」をイメージしたサラダに、アスパラガスとベーコンの串をあわせることでシーザーサラダを完成させる遊び心のある一品。サラダプレートにのせるクロッシュにはお好み焼きに使うフタを用い、大阪らしさも演出した
「Naniwa KUSHI Cuisine」から。施設内のガーデンエリア「みやぐりん」をイメージしたサラダに、アスパラガスとベーコンの串をあわせることでシーザーサラダを完成させる遊び心のある一品。サラダプレートにのせるクロッシュにはお好み焼きに使うフタを用い、大阪らしさも演出した
クリスマスシーズンには館内の至るところで、大阪らしさとクリスマス気分の両方を味わえるようにと、“串カツクリスマス”をテーマにした演出が行われた。写真は「OMOカフェ&バル」で提供された、“串スイーツ&クリスマス・スパークリング”のセット。今後もシーズナルイベントにあわせ、大阪文化をアレンジしたスイーツが登場の予定だ
クリスマスシーズンには館内の至るところで、大阪らしさとクリスマス気分の両方を味わえるようにと、“串カツクリスマス”をテーマにした演出が行われた。写真は「OMOカフェ&バル」で提供された、“串スイーツ&クリスマス・スパークリング”のセット。今後もシーズナルイベントにあわせ、大阪文化をアレンジしたスイーツが登場の予定だ

​担当:毛利愼 mohri@ohtapub.co.jp

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