金沢の文化に触れるセントリックらしい提案を観光をフックに地域活性化に寄与
---- コロナ禍になってから、多くのホテルが地域共生、まちづくりとどう関わるかを考えるようになりました。この観点から実施されていることがありますか。
当ホテルは兼六園、21 世紀美術館、ひがし茶屋街などといった金沢の王道の観光コースだけではなく、北陸・金沢の生活や文化を感じていただけるような橋渡しをしたいと考えています。フロントには地元に住んでいるスタッフが紹介したいこと、お伝えしたいことをまとめた「ヒミツマップ」も提供しています。
また、金沢への探究心をくすぐり、町に出て行こうと思っていただけるよう館内随所に金沢に関係の深いアートや工芸品を散りばめております。ロビーには金箔の大きなアート、若い方から人間国宝の作家さんによる工芸品、レストランで提供するケーキセットでは九谷焼や輪島塗の器とコラボレートしたプロモーションを行なうなど、金沢の魅力を伝えています。スタッフはこうしたアート作品や工芸、作家さんの基本的情報などをもとに、お客さまに即した接客や紹介をしてほしいと思っています。ハイアットらしい提案を発信していくことで、後継者不足でマーケットが縮小している地元の工芸がもっと注目されるようわずかながらお手伝いができればと思っています。少人数グループ客を対象に事前予約の上ですが、館内
アートツアーも実施しています。
---- 国内ゲストにどのような戦略を講じていらっしゃいますか。
「全国旅行支援」がスタートして需要のボリューム、性格も変わってきました。このような業界を支える策はありがたい半面、県民割開始から長期間続いていることで割引がないと損をしていると思われ
てしまう危機感を覚えています。
昨今の原材料価格高騰や人件費も上がる中で適正な価格転嫁をしていかないとなりませんし、それを利用者にご理解いただかなければなりません。そのためには支援策が終了後も利用者体験と価格が合致している、あるいは上回る経験を提供する必要があります。価値と価格のバランスを取る戦略が大きく問われる2023 年になると思います。
また、これまでほとんどの国内客は1泊でしたが、これを3 泊、1 週間と長く金沢・石川に滞在することでたくさんの発見があることを伝える施策やマーケティング活動も必要だと考えています。
---- これからチャレンジしていきたいことがありますか。
旅行者目線で町を楽しんでもらうことはもちろん、地元の方々にも旅行者を迎えて幸せを感じていただけないと持続しません。旅行者やホテルが増えることで、雇用や移住者が増え、税収が上がるのはポジティブな形での還元になると思いますが、それに起因する食品ロスやゴミ、エネルギー消費量の増加などの問題についても地元とホテル事業者が一緒に考えていかなければならないと思います。実際に金沢のゴミ処理の現場に足を運びましたが、まだまだ埋め立てされるものが多い状況です。もっとリサイクルやリユースできるものがないのか、われわれはプロモーションや商品販売を行なうとき、こうした環境に与える影響を常に自身に問いながら進めており、この視点はずっと必要だと考えています。
これからも観光をフックに旅行者と地域の方、ホテル事業者と従業員、地元企業がウィンウィンでハッピーな環境をつくることを目指していきます。