“親に怒られたことがない”“自分で決められない”など生活環境の変化の中、次世代をになう子どもたちの人間性も変わってきた。対面のコミュニケーションも不得手で感動や喜びを感じたことがないという若者もいる。そんな中、司会、衣裳、ホテルなど第一線で培ってきたウエディング実務の経験を生かし、厳しいながらも慕われ続けている人がいる。それが関西国際大学講師を務める石川夕起子氏だ。若者に何を教えるべきかを尋ねた。
自分の幸せが分からないから喜べない!
福永 石川先生は大学の教壇に立たれる前は「ワタベウェディング」のマネジメントをされていたのですよね。
石川 ラジオのDJ に始まり、声の仕事をするうちに、結婚式の司会の魅力にはまっていました。ある結婚式の打ち合わせのときに花嫁さんから“ウエディングドレスが似合わないんです”という悩みを打ち明けられたのです。理由を聞くと“プランナーさんに似合うと押し切られたので”ということでした。このお話を聞き、司会だけではなくウエディングプランナーの仕事すべてをやってみたいと思うようになりました。その後、「オフィスマーメイド」という司会事務所に所属した時、ワタベウェディングの三ノ宮店でお客さま相談コーナーがあり、オートクチュールウエディングを展開していたことから、ゼロからすべてを携わりたいという私の思いを実践できるワタベウェディングへの転職を決めたのです。今から16 年前のことです。
福永 ワタベウェディングにおける実績が認められ大学から講師としてのお声がかかったのですね。
石川 もともと、小学校の教員を目指していましたので、教えることは好きでした。ゼミ生は20人ほどですが1 回生、2 回生、3 回生を教え、今年で5 年目となりました。ブライダルといっても当初は男子が10 数人、女子が3、4 人で、男子はほとんど野球部に所属していました。正直、おどろきました。ところがまったくの畑違いということでなく、彼らはプロの野球選手になって活躍して、皆によろこんでほしいという気持ちがあったのです。目標はプロ野球選手になることですが、喜ばせたいという気持ちはウエディングプランナーと共通するところがあったのです。なかには“幸せってなに?”“人の幸せってなんやねん?”“自分の幸せが分からへんのに喜ばれんし”という声も。そのとき、どんなことでも喜べる、感動できる場を作り上げていくことが不可欠であると思ったのです。
福永 ウエディングの大手企業でも“感動屋さん”であることを採用のなかで最も重視している会社があります。まずは自分自身に感動経験がなければ、感動の連続であるウエディングを作り上げ、共感することができないという考えからなのでしょう。